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戦争の時代:ロシアとの最終戦争は回避できるか

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月6日 21時0分

 すでに制御不能になりつつある危険な炎にさらに油を注ぐのではなく、外交的なプロセスを開始した方が賢明だろう。NATOは、ウクライナ停戦合意(ミンスク合意)が完全に施行されるまで「平常通り」はありえないと主張している。ミンスク合意で重要なのはウクライナ自身だ。ロシアと欧州の平和は、ウクライナの過激派の人質にされている状態だ。過激派たちは、ドンバス(ウクライナ東部地域)での選挙及び地方分権を強化する憲法改正に向けたあらゆる動きを阻止している。

 シレフは自著の中で、ロシア国境付近でNATO軍事基地が拡大しており、ロシアが懸念を強めていると認めているが、それでもロシアを抑え込むべきという主張は変わらない。だがロシアは、世界で最も多数の核弾頭で武装した大陸規模の大国だ。西側諸国が軍事的優位を獲得するという野望は、達成不可能といえる。

 プーチン大統領は、2015年9月28日に行われた国連総会での演説で西側諸国に対し、複数の国々を破壊し、いくつもの地域を不安定化させた、軍事介入の失敗の数々について調査することを要求した。「あなた方は何をしでかしたのか、自分でわかっているのだろうか?」とプーチンは言った。ロシアは間違いなく難しいパートナーだ。だが、シリアを含む最も切迫したいくつかの国際問題に関しては、ロシアの分析は正しかった。

 2012年には、シリアのバシャール・アル・アサド大統領が退陣する代わりに世俗的な体制は残すという提案が行われたが、西側諸国が反対した。アサド政権はすぐに倒れ「穏健派」が勝利すると甘い見込み違いをしたからだ。その結果、シリアは何年にも及ぶ内戦に陥り、そこから派生した難民問題は欧州全体を根幹から揺るがしている。

破局

 ロシアと大西洋沿岸諸国との戦争がどのようなものになるのか、またはそれがどのように始まるのかを推測することに意味はない。だがそれは、すべての戦争を終わらせる戦争になるだろう。なぜなら、次の戦争を戦える国がなくなるからだ。いま強調されるべきは、全世界が終了するこのようなシナリオを回避すること、これまでの過ちをすべての視点から公正に認識するということ、そして、より実質的な取り組みのプロセスを新しく開始するということだ。

 終わりのない「制裁措置の延長」や、武力衝突やスケープゴートといったレトリックは、小さな出来事が制御不能な状況へと発展しかねない雰囲気を作り出す。そのようなことが絶対に起こらないようにすることこそ、われわれの世代の責任なのだ。

Richard Sakwa, Professor of Russian and European Politics, University of Kent

This article was originally published on The Conversation. Read the original article.

リチャード・サクワ(英ケント大学教授、政治学)


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