選挙の当落を左右する!? 味わい深き「疑問票」の世界
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月14日 19時4分
●ふたりの候補者の氏名を半分ずつ混ぜて書けば、案分扱いとなるのが原則だが、野田聖子氏と松田岩夫氏が立候補していた選挙区で投じられた『松田聖子』票は無効。「記載は著名な歌手を指し、いずれの候補者の氏名を記したものではない」との判断(1996年、衆院選岐阜1区/朝日新聞1996年10月22日)
●1票差で落選した堺俊昭候補が、わずかな望みを託して、『ひっこしのさかい』と書かれた票を自分への有効票だと主張した。しかし、県の選管は「ひっこし」を他事記載と認定して無効票にした。(1995年、香川県善通寺市議選/読売新聞大阪版1995年8月23日)
なお、冒頭でご紹介した、堀江貴文候補に投じたつもりの「ドラえもん」票は、彼の通称「ホリエモン」をさらに勘違いしたものであり、候補者本人から遠すぎて無効となる可能性が高い(参考:読売新聞2005年8月25日夕刊)。
いよいよ今度の参院選から、いわゆる「18歳選挙権」がスタートする。こういった日本独特の「疑問票ワールド」に触れてみることで、若い有権者にも「選挙って、意外と面白いかも?」と感じてもらえれば嬉しい限りだ。
ひょっとすると、「自分も疑問票を投じてみたい」と考えた人がいるかもしれない。だが、わざと愉快犯的に、微妙な疑問票を作ることは決しておすすめしない。ただでさえ大変な開票作業をむやみに妨害することでもあるし、それが無効票となってしまえば、結局なんの実りも得られない。
ひとりの有権者として、日本の政治を託したい候補者名や政党名を、落ち着いて、投票用紙へ正確に鉛筆で刻み込んでほしい。疑問票は、あわてんぼうで憎めない一部の有権者だけが生み出していれば十分だ。
諸外国ではどうか?
最後に、自書式でない諸外国の選挙についても紹介しておきたい。記号式投票では疑問票が生まれないのか......というと、実はそんなことはない。
たとえば、パンチカード式の記号式投票では、支持する候補者名のそばに道具を使って穴を空ける。この場合、パンチカードの穴から紙片が完全に抜け落ちなかったり、穴が貫通せずに紙がくぼんだだけの票が投票箱の中に混じったりすることがあり、それらが疑問票として扱われるのである。
ちなみに、この種の疑問票は「えくぼ票」(dimple vote)と呼ばれるらしい。それはそれで味わい深い。
[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」
長嶺超輝(ライター)
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