英国EU離脱投票、実は世代の「上vs下」が鍵を握る?
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月15日 17時50分
そもそも、コービンが「EU残留」を唱えることには、ファンダメンタルな危険が潜んでいるとオーウェン・ジョーンズが書いている。
労働党の指導者にとって最大の恐れとは、スコットランドのようになることだ。生活に不満を抱えた労働党支持者たちが、コービンがビジネス界の大物や保守党の大臣たちと一緒になって「脅しの運動」を行っているのを見たら、彼らは労働党を見離すだろう。スコットランド独立投票でも労働党支持者が大挙してSNP支持に流れた。今回は、恐ろしいことに、彼らの移動先はUKIPになるかもしれない。
出典:Guardian:"Working-class Britons feel Brexity and betrayed ... Labour must win them over " by Owen Jones
「経済的脅し」作戦は下層には効かない
スコットランドの独立投票は「マネー対スピリット」の戦いと言われた。独立反対派の主張は「独立したら経済が大混乱する」「税金が上がる」「物価が上がる」などの「経済的脅し戦略」に終始していたからだ。今回のEU残留派の主張もそれによく似ている。「経済がえらいことになりますよ」と国民を脅すばかりで、ポジティヴな残留理由がほとんど示されていない(コービンは示しているが、示し方が如何せん地味だ)。
さらに、前出のYouGovの世論調査では、ミドルクラスでは52%が残留希望、32%が離脱希望だが、これがワーキングクラスになると36%が残留希望で、50%が離脱希望と結果が見事に逆転する。つまり、残留派の「経済的な脅し」戦略は、失う資産を持っている層には効果的だが、すでに緊縮財政で貧しい生活を強いられている労働者階級には効かないということだ。後者にとってそれよりも大きいのは、現政権やエスタブリッシュメントへの憎悪だ。
「経済のハルマゲドン」の脅しは、無視され、のけ者にされ、軽視されてきたと感じているコミュニティの人々には響かない。絶え間ない経済不安の中で生きている人々に「経済不安を招く!」と言っているのだ。保守党の首相が英国のエスタブリッシュメントたちと徒党を組んで脅しの文句を口にしているのだから、大勢の人々はそれに中指を突き立てたくなる。
出典:Guardian: "Working-class Britons feel Brexity and betrayed ... Labour must win them over " by Owen Jones
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