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英国EU離脱投票、実は世代の「上vs下」が鍵を握る?

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月15日 17時50分


 この状況には労働党の影の内相アンディ・バーナムも警鐘を鳴らしている。北部出身の彼は、労働党は「北部の労働者階級層」という自らの伝統的支持基盤にもっとアピールする必要があり、ロンドンのリベラルなミドルクラスや外国人からの支持を頼みにしているだけでは、EU離脱派を勝たせてしまうことになるだろうと危惧している。彼はこう発言している。

「近年の労働党はあまりにもハムステッド(ロンドン北部の瀟洒な高級住宅街)寄りになりすぎ、ハル(ワーキングクラス人口が多いことで知られる北部ヨークシャーの都市)を見捨ててきた。我々はそれを変えなければならない。EU離脱投票の2週間前になって、我々はリアルな離脱の危機に晒されているのだ」

出典:Guardian:"Andy Burnham sounds alarm at 'very real prospect' of Brexit"

 労働党は今回のEU離脱問題で「ハムステッド的なものとハル的なものをつなげる」ことができていない。保守党の緊縮財政のせいで、倹約と締め付けで疲弊した労働者階級の人々は、一見アンチ移民に走っているように見えるが、実はオーウェン・ジョーンズが指摘するように、単なる「アンチ政権」に走っているのかもしれない。

 だから、違う動機でたまたま首相と同じ陣営に立っているコービンですら許すことができず、これまでコービンを支持していた労働者層が労働党を離れているとも言われている。

世代の「上VS下」が実は鍵を握る?

 また、こうした収入や階級の「上」対「下」問題に加え、今回大きく取り沙汰されているのは、年代の「上」対「下」だ。
 EU離脱の是非に関しては世代間で大きなギャップがあるというのだ。

 BBCが50歳以上のほとんどの人々は「離脱」を支持しているが、若年層では「残留」支持が増えるという主旨の特集を行っている。

 50代以上の、マジョリティーは英国人。という時代に育った人々は「国境を閉じて、移民をコントロールしろ」という考え方が主流だが、移民に囲まれて育った若いダイヴァーシティ世代は「なんで今更閉ざすの?」と思う人が多い。今回のEU離脱投票の鍵を握るのは若者たちだとも言われ、コービンや、女優のエマ・ワトソンなどが若い世代に「投票に行って欲しい」と呼びかけている。

 わたしの周囲でも、配偶者の同僚、友人のような中高年労働者はやはり圧倒的に離脱派が多い。逆に、同じ労働者階級でも若い同僚の保育士や学生はみな残留派だ。EUがなかった時代を知っている前者は「別に英国はあの頃も大丈夫だった」と言うし、EU世代の後者は「だって海外旅行が大変になるんでしょう?」という素朴な疑問を抱いていて、欧州の他国出身の恋人がいる子(これがまたけっこういる)などは切実に残留を望んでいる。

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