企業という「神」に選ばれなかった「下流中年」の現実
ニューズウィーク日本版 / 2016年6月21日 16時0分
1998年から2000年頃にかけては、100社以上の採用試験を受けて「内定ゼロ」というのも珍しくないほどの超就職氷河期でした。しかしそれ以降になると、嘘のように簡単に採用される年もありました。リーマン・ショックの前年(2007年)とか、あるいは2014年、2015年とか。2015年なんてまさに人手不足で、特に新卒は売り手市場になっています。(22ページより)
端的にいえば、「何年に生まれたか」というだけのことで人生が左右されるわけで、そのあおりをもろに受けているのがロスジェネ世代だということだ。雨宮はそのことについて、「ある意味では、『社会実験のモルモット』にされたようなものかもしれませんね」と述べているが、これはあながち間違った解釈ではないだろう。
第2章「我々はいかにして『下流中年』にさせられているのか?――働くことの意味を問い直す」で、このことについてさらに深く掘り下げているのは、1975年生まれで、自ら「下流中年」になったと認める赤木だ。バブル崩壊の余波を全身で被った世代として、学生時代のバイト代と大差ない賃金を得ながら、なんとか生き延びてきたと彼は自負している。
そして、下流中年とは、企業という「神」に選ばれなかった存在だとも主張する。実際のところ、大半の日本人が企業から多くのものを授かっているだけに、これは決して大げさな表現ではないだろう。
現在日本においては、企業に見出され正社員としての刻印を受けることが人間の始まりであり、人間になって初めて車を買ったり、家庭を築いたり、家を建てるだけの賃金を得ることができる。そもそも結婚して「家」を築くことですら、正社員として働き、一定の安定した収入を得ることでしか成し得ないのだ。
ではそれを得られない人間は......? ずっと年200万円以下の賃金で、たった一人で1年1年何とかしのいでいくしかない。(69~70ページより)
多くの人にとってこの点は、実際のところなかなか気づきにくい問題でもあるだろう。少なからず「神」に選ばれている以上は、報道などを通じて目にすることはあったとしても、皮膚感覚として理解しにくいことだからだ。
【参考記事】未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会
しかし、選ばれなかった人たちは、「ずーっとそうした生活を続けている」と赤木はいう(蛇足ながら、この「ずーっと」という表現の生々しさを少し恐ろしく感じた)。多少の増減があったとしても、非正規の人はいつまでも非正規のままで、ただ同じ生活を繰り返すことしかないとも。そのぶん、"非正規を数字で見るような報道"には違和感があるというが、無視すべきでないのはこの点だ。
この記事に関連するニュース
-
「8050問題が深刻化の恐れ」 25年は団塊ジュニア全員が50歳以上に
毎日新聞 / 2024年7月20日 13時0分
-
弁護士法人AURAによる、障害や生きづらさを抱える子を持つ親の不安を少しでも減らす本「障害や生きづらさのある子が生涯受けられる支援やサービスの上手な使い方」を発売!
PR TIMES / 2024年7月18日 10時45分
-
「自己責任論」から「親ガチャ」へ...「ゼロ年代批評」と「ロスジェネ論壇」の分裂はなぜ起きたのか
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月18日 9時45分
-
アルバイト25年、時給1200円から上がらない現実 声優しながらバイト掛け持ち、睡眠は5時間未満
東洋経済オンライン / 2024年7月5日 8時0分
-
「燕は戻ってこない」「東京貧困女子。」…東京での“生きづらさ”描くドラマが話題 それでも上京する背景とは
オトナンサー / 2024年7月2日 7時10分
ランキング
-
1仏、日本引き渡しに反対=反捕鯨の容疑者
時事通信 / 2024年7月23日 22時41分
-
2「トランプ氏は朝米関係に未練」と北朝鮮が論評 「親交誇示も肯定的変化なし」と主張
産経ニュース / 2024年7月23日 18時50分
-
3仏女優バルドーさん、反捕鯨団体創設者の拘束で日本を批判 「彼を助けねばならない」
産経ニュース / 2024年7月23日 12時33分
-
4「過去数十年で最も重大な失敗」…米シークレットサービス長官、トランプ氏銃撃事件の責任認める
読売新聞 / 2024年7月23日 10時22分
-
5トランプ氏暗殺未遂事件、米シークレットサービストップ「過去数十年で最大の失敗」と証言
産経ニュース / 2024年7月23日 8時49分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)