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ドイツ発「インダストリー4.0」が製造業を変える

ニューズウィーク日本版 / 2016年6月23日 17時28分

 例えば、生産情報を製造機械だけでなく個別の部品にも組み込めば、消費者のオーダーに応じて部品が自発的に加工・組立機械の元へ移動し、自分自身を自ら完成させるといった完全自動化も可能になるでしょう。

 Aさんのオーダーした大型セダンと、Bさんのオーダーしたコンパクトなスポーツカーを1つの工場で効率よく、迅速に、しかもコストを抑えて製造する、そのようなことが現実となるのです。製造品が自律的に動くわけですから工場の大規模な製造ラインが要らなくなり、企業の設備投資の縮小も期待できます。

国全体を1つの仮想工場に見立てる

 インダストリー4.0やスマート工場は、IoT*やIoS**の一部を構成する概念であると言えます。モノがインターネットにつながり、データの集合につながり、ひいてはモノ同士がつながっていく。"製造するモノ"と"されるモノ"がつながり、最も効率的な生産を実現すべく自律的に動いていく。その実現手段が、モノと情報をつなぐCPSなのです。

【参考記事】 GEがボストンに本社を移し、日本企業は標準化の敗者となる



 そうしてスマート化した工場同士を連結すれば、従来のバリューチェーンがデジタル化したデジタルバリューチェーンが完成します。各工場の情報システムをつないで、最終的に国全体を1つの仮想工場に見立て、国家の基幹産業である製造業を包括的に効率化することがインダストリー4.0の目標です。

 これを推し進めて、ドイツ国内だけでなく海外にもインダストリー4.0の技術を使った工場が増えればグローバルな水平展開も見込めます。従来のバリューチェーンがデジタル化される、すなわちデジタルバリューチェーンが構築できれば自国のスマート工場と基盤を同じくするスマート工場が増えるので、それだけ連携先も増えることになり、これもまたドイツにメリットとなるわけです。

インダストリー4.0はエコロジーも推進

 また、スマート工場のシステムや設備、機器などを丸ごとドイツに発注したい新興国の企業が出てくるかもしれません。買い替えや他のブランドへの乗り換えが容易にできる消費財と違って、工場となるとそう簡単に代替できません。最初の設備投資もさることながら、メンテナンスやバージョンアップも含めて長期的で安定した利益をもたらすでしょう。インダストリー4.0ビジネスは輸出産業としても将来性が期待されているのです。

 さらにもう1つ付け加えるとするなら、スマート化が実現すれば生産や廃棄のロスを減らせますし、そもそも本当に必要なものを作っているかを問い直すリデュースも促進されます。ですからインダストリー4.0はエコロジーを推進するものでもあります。

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