都知事に都議会の解散権はない......が、本当に解散は不可能か?
ニューズウィーク日本版 / 2016年7月17日 15時30分
ある意味で無茶ともいえる権限ではあるが、知事が住民の多数から直接選ばれ、信任されているからこそ、このような専決処分も許される。
ただ、それほど民主的正統度の高い知事にもかかわらず、議会を一方的、積極的に解散させる権限は持たされていない。一方で、総理大臣は、衆議院の解散権を「伝家の宝刀」として、常にその手に握っているとされる。なぜだろうか。
総理大臣の衆議院解散権に、法的根拠はない?
衆議院の解散については、日本国憲法の第69条に定められている。
◆日本国憲法 第69条 内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
これは、不信任決議に対するリアクションとしての解散を定めており、冒頭に挙げた地方自治法178条1項と同様の規定にすぎない。よって、この条文を、常時行使可能な「解散権」の根拠とするわけにはいかない。
衆議院が解散されるとき、議場に衆議院議員が集まり、皆でいっせいに万歳三唱をするシーンは、ニュース報道などでもおなじみで、壮観な光景である。じつは、総理大臣が解散権を行使して衆議院を解散する場合、万歳三唱の直前に、衆議院議長は次のような一文を読み上げている。
「日本国憲法第7条により、衆議院を解散する!」
では、そこに何があるのか、改めて日本国憲法第7条をチェックしてみたい。
◆日本国憲法 第7条 天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。〔中略〕3 衆議院を解散すること。〔後略〕
ご覧のとおり、衆議院を解散する事実を公にお示しになる、天皇陛下の国事行為――そのことしか書かれていない。
しかも、「内閣」の「助言と承認」である。とても、権限を定めた条文には見えないし、内閣に属するのが、総理大臣だけでないことは言うまでもない。
また、天皇陛下の国事行為には、衆議院解散の他に「憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること」「国会を召集すること」「儀式を行うこと」などもある。では、これらもすべて、「公布権」「召集権」「儀式権」などとして、総理大臣の独断で実行できるのだろうか。そんな馬鹿な話はない。
もし、憲法第7条から、総理大臣の独断で衆議院を解散する権限の存在を読み解ける人がいるとしたら、なかなか思い込みの激しいひねくれ者であろう。
だが、戦後まもない1952年の夏、当時の吉田茂総理大臣は、内閣不信任決議の「な」の字も出ていない局面で、いきなり超法規的に衆議院の解散を宣言した。そして、実際に解散総選挙も行われてしまった。
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