広告ブロック利用の急増に悩む新聞界──被害額は年218億ドルにも達する
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月2日 16時0分
ドイツのビルト紙は昨年10月から、広告ブロックをする読者にはコンテンツを読ませないようにする仕組みを導入した。読者には広告ブロッカーの利用を停止してもらう、あるいはビルトのサイトをホワイトリスト化してもらう、あるいは毎月2・99ユーロ(約342円)を払って広告をやや少なくしたサイトを閲読してもらうようにした。導入後一か月で、それまでは広告ブロックの利用率が23%であったのが、一ケタ台に減少した。
米経済誌フォーブズは昨年12月、広告ブロッカーを使う一部の読者にコンテンツの閲読を遮断した。閲読したい場合にはブロッカーを解除する代わりに広告が少ない形のサイトを読めるようにした。この実験によって、12月末から1月上旬までにサイトにアクセスした210万人の利用者がブロッカーを解除したという。結果として、1500万の広告インプレッションが生じ、収入を得ることができた。
出版社側にしてみれば読者が無料で記事を閲読できるのは広告があってこそだ。このため、広告ブロッカーを使う読者に記事を読ませないようにするのは出版社側にとっては「妥当な行為」となるかもしれないが、「危険も伴う」と報告書は警告する。トラフィックを減少させる上に、「読者の一部を失うことにもつながる」からだ。
広告ブロッカーは広告サーバーから出る広告を遮断するが、その広告が通常の記事を処理する編集管理システムの中からサイトに出るようであれば、遮断されないーこれがネイティブ広告が広告ブロッカーの対象にならないとする考え方だが、報告書は「広告ブロッカーは進化する」ため、必ずしも万全ではない可能性があるという。
ネイティブ広告のコンサルタント、メラニー・ディーゼル氏は「搭載に時間がかかり、視界を邪魔するような広告を作ってきたことへのツケが今、回ってきた」という。質の高いデジタル広告(記事と同等の質がある広告=ネイティブ広告)を作ることで、「読者の信頼を取り戻すしかない」。
ディーゼル氏が手掛けたのが、オンデマンド動画サービスを提供する米Netflixによる、女性受刑者を主人公とした「オレンジ・イズ・ニューブラック」にかかわるキャンペーンだ。
媒体ごとに異なる戦略を使った。例えばテック雑誌「ワイアード」に動画ストリーミングの未来についての記事を出し、ニュースサイト、バズフィードには「刑務所がそれほど悪いところではない21の理由」と題する記事を掲載。
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