【原爆投下】トルーマンの孫が語る謝罪と責任の意味(前編)
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月6日 6時2分
私が彼女に伝えたのは、ただひとこと。大切な人を亡くした相手に誰もが言う言葉だ。「アイム・ソー・ソーリー」。国を代表して、あるいは祖父に代わって私が「謝る」という意味の「ソーリー」ではなく、「おじいさんを亡くされたことをとても残念に思います」という意味だ。
その2日前、私はまったく別の体験をしていた。(連合軍勝利のきっかけとなった)ノルマンディー上陸作戦50周年を祝う式典に母と出席したときのことだ。アメリカの退役軍人2人が目に涙を浮かべていたので「どうしたのですか」と聞くと、「何でもない、何でもない。ただ、あなたのお母様に感謝しているのです。彼女のお父様が原爆を落とさなかったら、われわれは死んでいた。ここにはいなかったのだから」と言われた。
私は数日のうちにアメリカの退役軍人と、ヒロシマで祖父を亡くした若い女の子の双方から話を聞いたわけだ。ずっと頭に残る経験だった。
それから5年後、長男が学校からサダコの本を持ち帰ってきた(編集部注・広島で被爆して後遺症に苦しみながらも、回復を願って千羽鶴を折り続けた少女、佐々木禎子の実話)。学校の先生が読書の授業で読み聞かせてくれたという。長男はその本を気に入っていた。他の児童書のようなハッピーエンドではない本当の話だったから。私にとっても、これがヒロシマ、ナガサキに関するヒューマンストーリーに接した初めての体験となった。
それまで私は長男に、曽祖父の決断について理解することが重要だと話したことはなかった。ヒロシマとナガサキが経験した被害を知ることが重要だと話したこともなかった。(サダコの本を読んでくれた)先生は子供たちに日本の歴史や文化について教え、日本食レストランや茶道教室に連れて行ってくれた。日本に関するさまざまなことをわが家に持ち込んでくれた。
オバマ大統領が5月27日、慰霊碑に献花し、演説を行った広島の平和記念公園 Wolfgang Kaehler-Lightrocket/GETTY IMAGES
このエピソードを数人の日本人記者に話したところ、それを知ったサダコの兄の佐々木雅弘が04年か05年に「いつかお会いできますか」と電話してきた。会ってどうするかまでは考えなかったが、私は「イエス」と答えた。
結局、私たちは10年にニューヨークで会った。雅弘と彼の息子の佐々木祐滋(ゆうじ)が禎子の折り鶴を9・11テロの追悼施設に寄贈したときだ。祐滋がプラスチックの箱から小さな鶴を取り出して私の手のひらに乗せ、「これは禎子が亡くなる前に最後に折った鶴です」と言った。そして、雅弘と祐滋は「広島と長崎の平和記念式典に来ることを検討していただけますか」と言った。
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