【原爆投下】トルーマンの孫が語る謝罪と責任の意味(前編)
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月6日 6時2分
私は「イエス」と答え、2年後に日本に向かった。長女は仕事のため行けなかったが、当時23歳だった長男と15歳の次男を連れて行った。これがすべての始まりだ。
――広島、長崎についてお子さんたちにどのように教えたのですか。
彼らは既にその話に触れていたから、教える必要はなかった。長男はサダコの本を読み、歴史の授業を受けていた。広島と長崎に一緒に行き、翌13年には被爆者13人の証言を録画して伝えるために日本を再訪した。
録画テープをハリー・トルーマン大統領図書館(ミズーリ州)のウェブサイトに掲載するために、被爆者の話に英語の字幕を付けようとしている。ドキュメンタリーや映画、テレビ番組などで使えるようにするためだ。
――サダコの本を読んだ当時、息子さんから何か質問をされましたか。
長男は当時10歳だった。特に何も聞かれなかったが、私は「(原爆投下の)決断を下したのは、ひいおじいちゃんだ」と伝えた。その事実は知っていたはずだが、彼の中では(サダコの物語と曽祖父のことは)つながっていないようだった。まったく別の話として読んでいたから。
――それを聞いた息子さんの反応は?
......受け入れていた。彼はあの本を気に入っていたし、鶴を折るのが好きだった。日本が好きで、武道を習って育った。彼は単純にヒロシマ、ナガサキに興味を持っていた。
――それから17年がたちました。その間に息子さんから何か質問されたことは?
聞いてくる必要はなかった。彼自身が(トルーマン元大統領について)本を読むなどしてきていたから。
――あなたに対して「おじいさんの決断をどう思うか」と聞いてきたことはないのですか。
(少し声を荒らげて)ノー! 息子と私は一緒に活動してきたようなものだ。私は被爆者に向かって、原爆投下は素晴らしい考えだったと言ったりはしない。しかし一方で、太平洋戦争を戦ったアメリカの退役軍人に対し、原爆投下が間違っていたと言うこともできない。私はその真ん中で身動きができなくなっており、息子も同じなのだと思う。私たちにとって、あの決断が正しかったかどうかという問いは、その後に相手の立場を理解することや、何が起きたかを伝えていくことの大切さに比べれば重要ではない。
――これはあくまで私の想像ですが、あなたはおそらく、祖父の決断が正しかったかどうかを知りたくなったのではないでしょうか。そして、その決断を正当化できるか否かを理解しようと努力してきたはずです。しかし、その結果たどり着いた結論を口に出したら、日本人とアメリカ人の双方に大きな影響を与えてしまう。だから言わないでいるのでは?
この記事に関連するニュース
-
なぜ被爆した日本人の姿を出さないのか…『オッペンハイマー』高評価とは裏腹に悲しいほど前進のない原爆観
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 17時15分
-
映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち苦悩するアメリカの寓話【アニメで解説】
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月2日 18時10分
-
「原爆の父」オッペンハイマーの伝記映画が、現代のアメリカに突き付ける原爆の記憶と核の現実
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月22日 17時20分
-
『オッペンハイマー』:被爆者イメージと向き合えなかった「加害者」
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月11日 10時35分
-
映画「オッペンハイマー」と無条件降伏=改めてルーズベルトの遺産の大きさを思う
Record China / 2024年4月9日 7時30分
ランキング
-
1プーチン氏、戦術核演習を指示=「西側への対抗措置」
時事通信 / 2024年5月6日 19時13分
-
2中国、カナダの調査は「うそ」 総選挙に介入と報告書
共同通信 / 2024年5月6日 20時33分
-
3バイデン政権、米国製弾薬のイスラエル輸送を停止か…ハマスとの戦闘開始後で初
読売新聞 / 2024年5月6日 17時10分
-
4アメリカの大学で広がるガザ抗議デモ、社会への不満が根底か…大統領選の争点に
読売新聞 / 2024年5月7日 5時0分
-
5仏中首脳が会談=ウクライナ、貿易摩擦で溝
時事通信 / 2024年5月6日 23時52分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください