沖縄の護国神社(3)
ニューズウィーク日本版 / 2016年8月15日 6時47分
本土の関係団体からも支援された。全国知事会から一万五二九〇ドル、神社本庁から二〇〇〇ドル。全国護国神社会や靖國神社、本土企業の沖縄出張所や各県遺族会のほか個人からも浄財が寄せられた。やたらシーサーに似た狛犬も三重の人からの寄付である。
おかげで、その年のうちに再建工事が始まった。一九六五(昭和四〇)年八月に社殿が完成した直後には総理大臣・佐藤栄作一行が正式参拝し、新社殿で十一月一九日に行われた遷座祭にあたっては天皇から幣帛料も奉納された。一万名もの参列者で埋め尽くされ、玉串奉奠した沖縄中の各界代表者のなかには琉米親善委員長である米軍大佐までがいた。
無事に拝殿が再建され、一九六七(昭和四二)年、「復興期成会」は神社を護持する「沖縄県護国神社奉賛会」へと改組されたが、設立趣意書にある「全琉皆様方のご協力により」という表現は決して大げさなものではない。
「英霊を中心とする本土との一体化」
それにしても、アメリカ占領下の沖縄で、よりによって戦没者を祀った護国神社の復興が、なぜこんなにも一致団結した運動になれたのか。その理由は「本土復帰への想い」にあったのではないかと筆者は考える。念願の本殿が完成してまもない一九六五(昭和四〇)年頃に書かれたらしい具志堅宗精の文章と、それを義父・加治順正が「胸を打つ文章」と評したのを読んで確信を深めた。
具志堅は「戦没者の慰霊顕彰について」という文章で、自分が終戦直前に拳銃自殺を図って失敗して生きながらえたことに触れ、「常に英霊に対し報恩感謝の念を忘れず余命は広く社会の為に奉仕し度い」と述べ、本土出身の戦没者を合祀したことをこう表現する。
そして郷土出身全戦没英霊を合祀するばかりでなく今次沖縄戦に於いて散華された本土各都道府県出身戦没者六万五千柱を合祀して神職を靖國神社から招聘し英霊を中心とする本土との一体化の実を挙げて英霊も満悦のことと感応するのである。本土復帰の実現も近々に迫りつつあるやに感じ英霊の御加護新たなるを想う。(『歩み』、二一一頁)
また、「戦跡『霊域』の清掃管理について」という文章では、沖縄各地に建立された慰霊塔の清掃管理を、政府の補助を得て沖縄戦没者慰霊奉賛会が請け負っていることについて、「此の戦跡を見てもわかるように英霊を中心とする本土との一体化はすでに実現されていることを強く感ずるものである。」(『歩み』、二一一頁)と同じ言葉遣いで記す。
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