日中両国に利したG20と日中首脳会談
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月7日 17時0分
日中首脳会談を終えた安倍首相は、伊勢志摩サミットにおける経済危機宣言をG20諸国と共有したと述べた。この事実は習主席に有利に働いており、日中首脳会談に進展を与えた。しかしなお日中間の溝は浅くない。
伊勢志摩サミット宣言と杭州G20のテーマ
今年5月26日から27日にかけて三重県の伊勢志摩で開催されたG7(先進7か国)首脳会議で、安倍首相は「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している」として、リーマンショック前の状況に似ていると発言した。このとき一部の国の首脳は首をかしげ、また伊勢志摩サミット閉幕後、日本の少なからぬメディアは、安倍発言に批判的だった。消費税増税延期を正当化するための詭弁と批判するエコノミストもいたほどだ。
ところが、安倍首相の経済危機発言は、G20杭州サミットの議長国となっていた習近平国家主席にとっては、これほどありがたいことはなかっただろう。
習主席としては何としてもG20で南シナ海問題等に関して中国包囲網を形成されたくなかったので、そのためにあらゆる手段を駆使し、「経済問題」にのみテーマを絞りたかったからである。
だから「世界経済に危機的問題がある」ことをクローズアップされる方がありがたかったのだ。その結果、G20の首脳宣言では「世界経済の成長は期待よりも弱く、下振れリスクがある」という認識を共有することとなった。
中国のネットでは、「なぜか日本でG7など先進国サミットが開催されると、本当にその年には経済危機が訪れる」といった趣旨の報道が散見される。それらの情報によれば、たとえば、
●2000年「九州・沖縄サミット」⇒アメリカ発のITバブル経済崩壊
●2008年「北海道・洞爺湖サミット」⇒アメリカ発のリーマンショック
●2016年「伊勢志摩サミット」⇒イギリスがEU離脱。世界経済に不安材料。
などが挙げられている。
そのため、G20首脳宣言の中には「イギリスのEU離脱問題に積極的に対応する」という文言さえ盛り込まれている。
つまりG7「伊勢志摩サミット」における安倍宣言は的中したということになる。だから習主席がG20杭州サミットのテーマを経済に絞り込んだのは、決して中国包囲網を回避するためではなく、あくまでも現実に経済危機が存在するからだ、という論理なのである。
安倍首相は思いもかけないところでG20杭州サミットに「貢献」し、皮肉にも習主席に正当性を与えたという結果になるという構図だ。
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