「親を捨てるしかない」時代に、子は、親は、どうすべきか
ニューズウィーク日本版 / 2016年9月27日 6時15分
人間の決意は、状況によって揺らぎ、変化していく。また、そこには「ボケ」という事態も絡みついてくる。つまり「子どもには迷惑をかけたくない」という思いからはじめたはずの終活も、やり遂げるのはかなり困難だということだ。
では、親が子どもに捨てられるのだとすれば、そして終活もままならないのだとすれば、親はどうしたらいいのか? この問いに対して、著者は第5章でこう断言している。
究極の就活は、「とっとと死ぬ」ことに尽きる。死んでしまえば、「子どもには迷惑をかけたくない」という高齢者の思いも満たされるし、事実、子どもも助かる。(144ページより)
実際に、自ら死を望む人もいるだろう。第2章には「社会の活力の維持には適切な形での新陳代謝が必要であり、高齢者にしても、いかなる状態になっても長生きしたいとは考えていない。よって自分が寝たきりになったら、介護を拒否して安楽になりたい」という83歳男性の新聞への投書が紹介されている。
だが現実はといえば、家族こそが「とっとと死ぬ」ことを阻んでいる元凶でもあるのだという。
介護する側に収入がなかったり、ごく低額の収入しかなく、介護される高齢者の年金に頼っていたら、ますます死なせてはくれなくなる。本人のためではなく、介護する側の都合で、死につつある高齢者が生き続けることを強いられるのだ。(154ページより)
そればかりか、そもそも「家」という考え方が成り立たなくなっている。
家が永続性を失い、脆いものになったことで、先祖という存在自体が消滅して、先祖の祟りという脅し文句にリアリティーを感じられなくなったのだ。 これは、都会における暮らしの気楽さを象徴する出来事でもある。(中略) そんな形の家を作ってきたのだから、都会の人間は、最後単身者世帯になり、たったひとりで死んでいくことを覚悟しなければならない。(192~193ページより)
家や家族の関係が脆いものである以上、兄弟姉妹の関係になれば、もっと脆いのは当然。だとすれば人はひとりで生きていき、ひとりで死んでいくしかない。だから、子どもに介護を期待すること自体がありえないことだと著者。子どもはそんな義務を果たす必要がないし、親もそれを期待できないと覚悟すべきだということだ。
追い込まれてから親を捨てるということは、実際には大変なことだし、心理的にも負担になる。必要なのは、そうした事態を生まないことであり、それ以前にしっかりと親離れ、子離れをしておくことなのである。(194ページより)
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