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芸能人の「一日警察署長」も、容疑者を逮捕できます

ニューズウィーク日本版 / 2016年9月27日 12時15分

 法律上(刑事訴訟法212条2項)は、たとえ犯罪行為をその目で見ていなくても、犯罪が終わって間もないと明らかに認められ、

●「犯人として追呼されているとき」(「その人、ドロボー!」と名指しして追いかけている人がいる場合など)

●「贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき」(犯罪で使ったと思しきナイフや拳銃、盗まれた品物などを持っている場合など)

●「身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき」(返り血を浴びていたり、防犯カラーボールの蛍光インクが付着している場合など)

●「誰何(すいか)されて逃走しようとするとき」(「お前、何やってんだ?」と声をかけても、返事せずに逃げ出した場合など)

 ......これらの各場面に該当するなら、現行犯と同等にみなして、やはり誰でも逮捕することができる(準現行犯逮捕)。これらが該当しない場合は、誤認逮捕が発生してしまうおそれが高まるため、裁判官のチェックが必要な通常逮捕に切り替えなければならない。

 ちなみに判例によれば、事件発生から1時間40分後、現場から直線距離で4キロ離れた場所で、「誰何されて逃走しようと」した者を、事件を目撃していない警察官が捕まえた行為について、「犯罪が終わって間もない」として、準現行犯逮捕の成立を有効に認めている(和光大学事件上告審判決:最高裁判所第三小法廷1996年1月29日)。

 もちろん、事件当時から現行犯を見失わずにずっと追跡していれば、どれだけ時間が経過しようと、現場から何キロ離れていようと、理論上は現行犯逮捕が成立しうる。

 マラソンランナーの署長なら、自転車で逃げる容疑者でも粘り強く追いかけて検挙することだって期待できる。体格のいいプロレスラーや力士が一日警察署長であれば、力づく、あるいは技術で逮捕できるはずだ。格闘の心得がある演歌歌手やアイドルの署長も、容疑者を制圧して逮捕できるかもしれない。それ以前に危険なので、周囲の警察官やマネージャーが止めそうだが......。

 それでも、この世にはびこる悪を現行犯逮捕する権限は、万人に開放されている。いつの日か「お手柄!一日警察署長」という派手な見出しが、新聞やネットに躍ってもおかしくはない......かもしれない。

[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」



長嶺超輝(ライター)


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