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英前政権の「負の遺産」、中国の原発参入に安全保障上の懸念

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月5日 17時54分

 同氏によると、英国企業にサイバー攻撃を仕掛けるなど中国が「英国の国益を損なう行為を続けている」ことは英国の情報機関MI5も確信しており、原発に関しても中国は「発電をストップさせるプログラムを埋め込むのではないか」と警戒。「国家安全保障を危険にさらしてまでビジネスをするべきではない」と結論付けている。

【参考記事】ブレグジット後も、イギリスは核で大国の地位を守る



Brexit決定後の不安定象徴

 左派系のガーディアン紙(16年9月15日)に寄稿した作家のジョージ・モンビオット氏は、ヒンクリー・ポイント原発を、タイの国王が飼育に莫大(ばくだい)な費用が掛かる白い象を臣下に贈って破産させた故事を踏まえ、「非常識な白い象」と形容した。同氏は「原発は温室効果ガスの排出を抑制する」と評価する立場だが、同原発は「建設は不可能かもしれない」と予想する。

 EDFなどの原発は「欧州加圧水型炉(EPR)」で、既にフィンランドのオルキルオト、仏北部フラマンビルで建設が進められているが、いずれも暗礁に乗り上げている。同氏は複雑すぎる設計が問題として、「大聖堂の中に大聖堂を建築するようなもの」とする原子力専門家の見解を引用。さらに、使用済み核燃料の処理方法が未決定であるといった問題点を列挙した上で、結果的にメイ首相の決断は「英国の原子力産業を葬り去る」かもしれないとの懸念を示した。

 保守系のテレグラフ(8月9日)のアンブローズ・エバンス=プリチャード氏は、フランスの与党、社会党までもが「今回のプロジェクトはEDFの経営を危うくする」として反対を表明したことを取り上げ、計画への疑念を呈した。

 EDFとCGNに対して、英政府は今後35年間にわたり、現在の電力コストの2倍以上の、1メガワット当たり92.5ポンド(約1万2000円)の価格保証を行った。しかし、ヒンクリー・ポイントの計画そのものは13年、エネルギー価格の大幅下落が始まる以前に合意されており、現在では消費者が最終的に負担する額は60億ポンド(7800億円)から、300億ポンド(3兆9300億円)に膨れ上がったとされる。

 さらに、EU離脱決定で英国を取り巻く情勢が不安定さを増している状況を踏まえ、同氏は、「計画は主に政治的な理由で生き永らえている」と批判。「フランスや中国との関係維持のため続行すると言うなら、この一件は外国の国営企業とのビジネスはどれほど危険かという教科書的な例になる」と警告した。

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