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英前政権の「負の遺産」、中国の原発参入に安全保障上の懸念

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月5日 17時54分



外資導入に制限か

 フランスの左派系高級紙ル・モンド(9月15日)で、エリック・アルベール記者とジャンミッシェル・ベザ記者は、計画が承認されなければ、フランスの原子力産業に致命的な影響が出かねず、決定はEDFなどの経営陣を安堵(あんど)させたはずだとする。その上で、両記者はメイ首相が、最終承認に当たってヒンクリー・ポイント原発の持ち分売却に制限を設けたことを取り上げた。

 EPR型についてはヒンクリー・ポイントに引き続き、サイズウェル(英南東部サフォーク州)にも2基を建設する予定だが、さらにブラッドウェル(南東部エセックス州)での100%中国製の原発建設も合意されている。メイ首相はブラッドウェルを念頭に、国家安全保障に関わるインフラへの外資導入に一定の制限をかけたとみている。

 リベラル系の南ドイツ新聞(9月15日)のビヨルン・フィンケ記者は、今回の原発を「福島第1原発の事故以来、EU加盟国が建設する最初のもの」と位置付けた。その上で、英政府の電力買い取り保証について、オーストリアとドイツのエネルギー10社、およびオーストリア政府が15年、EUが合法的な補助金と認定したことに反発、欧州裁判所に提訴したことを紹介している。記事には「太陽、風力など代替エネルギーが普及し始めた現在、原子力は商業的に不要な存在で、英国の措置は電力市場の価格形成をゆがめる」とする提訴サイドの見解が引用されている。 ドイツ、オーストリアと同様に脱原発を推進するイタリアでは、中道左派系のラ・スタンパ紙(9月15日)がヒンクリー・ポイント原発を「前首相による中英の蜜月時代の象徴」などと揶揄(やゆ)。また、経済紙コリエレ・デラ・セラ(9月16日)は、中国原発の承認に合わせて、英タイムズ紙などが報じた「ロンドン市内の監視カメラ、CCTVの大半が中国政府の支配下にあるハイクビジョン社の製品」という記事を引用。中国に安全保障が脅かされるという懸念が英国で広がっていることを伝えている。

[執筆者]
加藤雅之(かとう・まさゆき)
ジャーナリスト
1987年時事通信社入社。経済部、ジュネーブ特派員などを経て2011年よりフリー。16年5月、5年間滞在した英国から帰国。著書に「イタリアは素晴らしい、ただし仕事さえしなければ」(平凡社新書)。


※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。




加藤雅之(ジャーナリスト)※時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」より転載


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