ノーベル平和賞以上の価値があるコンゴ人のデニ・ムクウェゲ医師 ―性的テロリズムの影響力とコンゴ東部の実態―
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 17時10分
東大での一人デモの若者が、ベニにおける殺戮にフラストレーションと怒りを抱いていたことは明らかであろう。
ルワンダに「偽装占領」されているコンゴ東部
ムクウェゲ医師の活動拠点であるコンゴ東部のブカブは南キブ州の州都であり、かつ過去20年間、「紛争」の中心地でもある。紛争地なので当然大変難しい環境と想像できるが、その難しさのレベルについて理解している人は非常に少ないと思う。
コンゴ東部は「第一次アフリカ大戦」と呼ばれたものも含めて、1996年から和平合意が成立した2002年まで武力紛争が続いたが、現在も上記のように「茶番劇」的な「紛争」が継続している。もっと正確に言うと、1996年9月にルワンダ軍とルワンダ政府の代理である「コンゴ」武装勢力がコンゴ東部に侵攻し、現在もルワンダ軍がコンゴ東部を「偽装占領」し続けている。だが、例えばイスラエルがパレスチナに入植地を建てて、あからさまに軍事占領していることは国際的に認識されているのに比べて、コンゴ東部の占領は不可視化しているため認識されていない。
なぜ認識されていないのか?それには理由が3点ある。
第1に、1920年代以降、ルワンダ人(多数派フツと少数派ツチ)が移民や難民としてコンゴ東部に半強制的に移動したために、コンゴ東部にはルワンダ系住民が多く、コンゴの国籍を取得したことだ。ルワンダ人の中でも特にツチが1960年代以降、コンゴの政治と経済に影響を及ぼし、それが現在でも続いている。
第2に、コンゴは一応独立した国家であるが、1997年以降、政治・軍事組織がルワンダの直接的な影響の下に置かれていることだ。コンゴ国家の主要なアクターはルワンダ人であると信じられ、その代表的なアクターがジョセフ・カビラ現大統領である。そのため、コンゴ政府は1998~2000年を除いて、2001年以降、ルワンダ政府の代行としてコンゴ東部に占領してきた「コンゴ」反政府勢力を非難したことがない。
第3に、コンゴの大戦以降の2002年に、ルワンダ軍を含むすべての外国軍がコンゴの領土から即時撤退が要求されたにもかかわらず、ルワンダ軍は完全に撤退しなかったことだ。それどころか、PKOによる平和構築の名の下で実施されたコンゴ軍の「軍統合」の際に、ルワンダ軍(「コンゴ」反政府勢力がその代理)とルワンダ反政府勢力はコンゴ軍に「潜入」(infiltrate)したのである。そのルワンダ軍・諜報機関の幹部は、コンゴの国籍をこっそりと取得した。
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