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ノーベル平和賞以上の価値があるコンゴ人のデニ・ムクウェゲ医師 ―性的テロリズムの影響力とコンゴ東部の実態―

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 17時10分


「私はベニ」の英語、フランス語とコンゴのリンガラ語のスローガン。

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(注2)2015年1月、フランスにある風刺週刊誌の「シャーリー・エブド」本社で12人が死亡したテロ事件後、表現の自由を支持する人たちによって掲げられたスローガン。



 一般的に言われているのは、この殺戮の加害者は、1995年以降コンゴ北東部にいる、ウガンダのイスラミスト系反政府勢力(ADF)であることだ。しかしある調査によると、市民を守るはずのコンゴ軍が逆に攻撃し、しかも市民一人を殺害すると250米ドル(約25,000円)の報酬がもらえると言われている。

 国連の機密報告書も、殺戮の責任者がコンゴ軍であり、同軍の将軍が市民を殺害する目的でADFをリクルートし、資金を提供し、そして武装したことを明記している。

 コンゴ東部の紛争について簡単に説明しよう。1990年代後半以降、コンゴ東部にはADFのような外国反政府勢力、国内の反政府勢力や民兵を含む、少なくとも40の武装勢力が相互に、またコンゴ軍やルワンダ軍と戦闘しているため、紛争が20年間続いていると言われている。コンゴ軍は治安回復のために、それらの反政府勢力に対して掃討作戦(敵を排除するための軍事活動)を行ってきたが、なかなか紛争は治まらない。

 それもそのはずだ。ベニに限定すると、コンゴ軍とADFは戦闘しているというより、実は「協力関係」にあるからである。例えば、国連専門家グループの最新報告書によると、コンゴ軍はADFに弾薬、制服と食糧を提供したことが明らかになっている(注3)。同様に、ルワンダ軍とルワンダの反政府勢力も政治的に敵対関係にあると認識されているが、同様に経済的に協力し合っている(注4)。

 さらに悪いことに、世界最大級のPKOである国連コンゴ民主共和国安定化ミッション(MONUSCO)はコンゴ軍だけでなく、反政府勢力との「協力」を通して、「紛争」の長期化に加担している。例えば、インド軍のPKO要員はルワンダ反政府勢力(FDLR)を武装解除せず、国連の食糧配給をその反政府勢力に金(ゴールド)と引き換えに横流しをしていることが報道された(注5)。また2009年に、コンゴ軍主導の対FDLRの掃討作戦が実施され、悪名の高かった作戦として知られている。それは、子ども兵士の徴集の容疑で国際刑事裁判所(ICC)に起訴されていたボスコ・ンタガンダというコンゴ軍の将軍 (注6)が本作戦を主導したからで(注7)、MONUSCOがその後方支援を担当していた。MONUSCOは、ンタガンダ将軍がこの掃討作戦を主導したことを否定したが、ンタガンダ将軍の関与が真実であれば、PKOは戦争犯罪人と協力していたことを意味する。スキャンダラスな問題として報道された(注8)。

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