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レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 12時15分

レジリエンス(逆境力)とは何か?

「誰もが経験したことがあり、私にも覚えがあるが、自分自身に関することや人生の意味についての発見というのは、科学的発見とは違って、まったく新しい、思いもよらなかった何かからもたらされるわけではない。むしろ、本当は前々からわかっていたのに、あらためてはっきりと認識した何かである。ただ、それまではきちんと形にしたくなかったので、とうにわかっていながら、わからないと思い込んでいただけだ」  W・H・オーデン『道しるべ』

 何らかの力を外界から受けた場合、それにどう反応するかは人によってさまざまだ。誰かから軽くひじ鉄をくらっただけで自尊心が傷つき、仕事の成績が一気に低下してしまう人もいれば、数々の嵐に遭遇しても相変わらず有能ぶりを発揮し、健康で幸福な生活を満喫している人もいる。大きな重圧がのしかかったとき、ある人は挫折し、ある人はうまく対処し、ある人は上手に切り抜けるだけでなく力強く成長する。これがレジリエンスだ。レジリエンスの原動力は何か、レジリエンスが欠けている人がいるのはなぜか、レジリエンスは強化できるのか。私たちはそれを知りたい。

「レジリエンス」とは、もともとは物質の性質をあらわす物理学の用語だ。物質に力を加えて曲げたり、圧力や負荷をかけたりしたとき、その物質が元の形に戻る速度を左右する力、すなわち「外力によるゆがみを跳ね返す力」がレジリエンスである。レジリエンスという性質によって、物質の弾性や応力(ストレス)に対する反応が決まる。この定義を覚えておくと役に立つ。というのも、人におけるレジリエンスについて考えるとき、私たちはいつもストレスをネガティブにとらえてしまうからだ。だが、物理学の世界でのストレスは、ばねやカンチレバー構造 [一端を固定し、他端を自由にした梁構造] の橋などに有用な力である。同じように、人も外部からのストレスによって生産性の向上を経験することがある。締め切りの圧力などがその好例だ。



 アンドリュー・ゾッリとアン・マリー・ヒーリーは、共著書『レジリエンス 復活力――あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か』(ダイヤモンド社)のなかで、レジリエンスについて、「劇的に変化する状況に直面しても、システム、企業、または人が、その目的の主眼を見失うことなく本来の姿を保つ能力」という包括的な定義を提唱している。この「目的の主眼を見失うことなく本来の姿を保つ」という部分から、レジリエンスとは、物事を切り抜けてうまく対処する能力以上の何かであることがわかる。より健全な平衡状態に到達すべく成長する能力とでも言えるだろうか。

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