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レジリエンス(逆境力)は半世紀以上前から注目されてきた

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 12時15分

 人におけるレジリエンスとは、立ち直る能力を意味する。ビジネスで言うなら、危機的な局面に陥ったのち、通常業務を再開する能力ということになる。短期間の事柄に用いられることもある。失望したり自分を否定されたりしたあとに「魔力」が復活する、というような場合だ。このほか、より深いレベルで自尊心と目的意識を取り戻すことを意味する場合もある。要するに、健康で幸福な生活とその持続を脅かすあらゆる出来事――人生の道のりの紆余曲折に対応する能力がレジリエンスだ。こうした出来事には、確実に起こるとは限らないこと(失業による仕事や地位の喪失など)もあれば、絶対に避けて通れないこと(加齢、健康状態の悪化、死別)もある。

 レジリエンスはタフな精神とは違うが、両者には密接な関係がある。タフな精神とは、決断力や意志の強さのような性格をも包括する概念であり、ときに他者の目を通して物事を見ようとしないことをも意味する。だがレジリエンスは、おとなしい人にも押しの強い人にも同じように備わるものだ。

レジリエンスという概念はどのように広まったか?

「レジリエンス――個人、コミュニティまたはシステムが、適正な水準の機能、構造、アイデンティティを維持するために適応する能力」 英国内閣府、2011年3月

 レジリエンスは、心理学でも半世紀以上前から注目されてきた。初期の研究では、第二次世界大戦で難民となった子供たちについて、その後の人生の追跡調査が行われた。なかにはホロコーストを生き抜いた子供たちもいた。心理学者たちが不思議に思ったのは、情緒的に安定した、目的意識のある生活にすぐになじんだ子供もいれば、そうした子供たちの兄弟姉妹も含めて、心の傷を抱えたまま成長する子供もいたことだった。そのため、初期の研究では子供の発達に大きな焦点が当てられたが、のちの研究では、人生を混乱に陥れる事件や出来事に対する成人の反応へと関心が移っていった。



 その後、レジリエンスの研究は、戦地からの帰還兵に焦点が当てられた。戦地で残酷な経験をした帰還兵のなかでも、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に長期間苦しむ人、ほとんど障害がない人、まったく障害がない人がいたため、それについて研究が進められたのである。

 レジリエンスは、自然災害によってコミュニティが極度の損失や飢餓状態などに見舞われた後で、自らを再建する能力、そして行政機能を迅速に回復させる能力を表す用語でもある。また、コミュニティが伝統産業を失うなどして景気が低迷したときに、自らのあり方をいかに再構築するかを語るときにも使われる。

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