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習近平と李克強の権力闘争はあるのか?――論点はマクロ経済戦略

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 17時54分

 そこで経済学者の「劉鶴」を頼りに、彼にブレインの役割をしてもらっている。独断を続ければ、文化大革命を招いた毛沢東と劉少奇の関係になりかねないので、劉鶴に助言を求めたのは、非常に良いことだ。



「権威人士」の発言――本当に李克強を攻撃しているだろうか?

 5月9日に、党の機関紙である「人民日報」に「権威人士」と名乗る人物の評論が出た。それは表面的には「劉鶴が、李克強のマクロ経済戦略を(習近平に成り代わって)攻撃している」ように見えるが、詳細に読んでいくと、必ずしもそうではない。「供給側の構造改革を行なわない限り、中国の経済は破綻する」という含意がキッチリ含まれており、しかも「我々の目的は政府の干渉を減らすことで市場のメカニズムに委ねなければならない」とまで明言している。

 なんと、これは李克強の意見に一致しているではないか。

香港メディアを操る江沢民

 これら一連の現象を、すべて「権力闘争」に矮小化したがる影の軍団がいる。

 それを操っているのが、江沢民だ。

 やがて「大虎狩り」のターゲットが自分に向けられることを知っている江沢民は、習近平の力を削ごうと、一部の香港メディアを買収して、盛んに「権力闘争説」を流しまくっている。

 日本のメディアや一部の中国研究者は、すっかりその情報に乗っかってしまい、論理的に中国政治構造との間に矛盾があることも考えず、凄まじい勢いで「習近平と李克強の権力闘争説」を拡散させているが、これが日本の国益にかなうか否かは、論ずるまでもないだろう。

 結果、どうなるのかに関しては、長くなりすぎたので、今後継続して論じていきたいと思う。


[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)



※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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