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がん治療にまた新たな希望 免疫療法で製薬各社の競争加速

ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 18時43分

「腫瘍学は、このように際限のない悲観論と過剰な楽観論のあいだを行ったり来たりしている。だから、慎重になる必要がある」とESMOのFortunato Ciardiello会長は言う。

 もっとも、投資家は素早く態度を決め、10日午前の市場ではブリストルの株価が10%下落する一方で、メルクは2001年以来の高値をつけた。

がん細胞を反撃

 免疫療法では、免疫系のブレーキを解除し、体内のナチュラルキラー細胞が腫瘍を攻撃することを許容することにより、健康な組織を巻き添えにするほどの毒性を伴う化学療法とは別のアプローチを提供する。

 免疫療法にも副作用がないわけではないが、より身体に優しい選択肢であり、効果もはるかに長く続くことが約束されている。

 ブリストル、メルク、ロシュは免疫療法薬について米国の認可を得ており、ブリストルとメルクは欧州でも薬を販売している。だが中国はまだこれらの薬を認可していない。



 肺がんは、がんの中でも最も死者数が多く、年間の死亡者数は160万人に達する。今後の免疫療法薬の処方例でも肺がんが圧倒的に大きなシェアを占めることになることが見込まれる。もっとも免疫療法は、これ以外にも黒色腫、ホジキンリンパ腫に加え、胆嚢・腎臓・頭頸部のがんにも用いられている。

 肺がんに対する単剤療法においてはメルクが市場を席巻しようとしているが、医師たちは次の段階に注目している。PD-L1レベルの低い残りの患者に関しては、療法の併用が今後の道だろうというコンセンサスが形成されつつある。

 仏グスタフ・ルッシー研究所のジャンシャルル・ソリア医学教授は、多剤併用療法市場における優位をめぐる今後の競争について、「もちろん、レースは始まっている」と語る。

 研究者たちは、理論上は、他の薬を追加することによって免疫系にがん細胞を反撃させ、もっと多くの人々に治療効果をもたらすことは可能だと考えている。

 これまでのところ、最大の関心が注がれているのは2種類の免疫療法を組み合わせることだが、通常はそれぞれの薬に年10万ドル─15万ドルの費用がかかるため、コスト面での問題が浮上してきた。

 多剤併用療法という戦略によって、アストラゼネカにもチャンスが生まれてきた。同社はこれまで他社の後塵を拝してきたが、来年早々に臨床試験の結果が報告される混合薬によって、ライバルを一気に追い越したいと願っている。

 ブリストルも同じアイデアを追求しているが、こちらの2剤併用免疫療法の臨床試験の結果は2018年まで出ないと予想されている。

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