がん治療にまた新たな希望 免疫療法で製薬各社の競争加速
ニューズウィーク日本版 / 2016年10月18日 18時43分
ところが、ESMOの総会では、もう1つ別のアプローチ、つまり免疫療法と化学療法をうまく併用させる可能性も浮上してきた。
過去には多くの科学者がこのアイデアに懐疑的であり、現在でも、患者が長期的な反応を示すかどうかという点で疑問が残っているが、ESMOで紹介された中期研究から得られたポジティブなデータからすれば、このコンセプトには現実的な見込みがあるようだ。ロシュ、メルク両社も熱意を示している。
こうしたさまざまな組み合わせをすべて試していくことは大変だろうし、ESMO会長は、がん治療研究の関係者は、今後数年間でより多くの臨床試験の結果が発表されるのを待たなければならない、と言う。
「われわれはがんを治療可能な病気にするという素晴らしい時代に生きていると思う。だが、それには時間がかかるだろう。学べば学ぶほど、それが非常に複雑な問題であることが分かってくるからだ」と同会長はロイターの取材に語った。
大きな可能性
今後、信頼すべき軸になる治療法が何になるかはまだ誰にも分からないが、こうした新世代の治療薬が大きく成長していくことはすでに明らかだ。
「免疫療法市場のことを考えるたびに、あまりにもチャンスが大きいことに驚嘆する」とリーリンクのアナリストであるシーマス・フェルナンデス氏は話す。
同氏は「キートルーダ」「オプジーボ」、さらにはロシュやアストラゼネカ、ファイザーなどが発売する競合製品の年間売上高は、合計で300億ドル─400億ドルになると見ている。
各社間で市場が最終的にどう分割されるかはまだ不明だが、先週末、コペンハーゲンの総会において主要な勝ち組として名乗りを上げたのは、確かにメルクだった。
これによって、8月にブリストルが単剤療法の治験が失敗したことを初公表して以来はっきりしてきた期待の変化が、さらに強められた。
腫瘍が劇的に縮小した英国人患者オフリンさんは、自分が新しい治療法を試すチャンスを得られたことを単に喜んでいる。
「私の兄はがんになり、化学療法を受けたが、それは大きな苦痛を伴うものだった。それなのに私は、少し倦怠感があることを除けば、現実的な副作用は何も経験していない」
(翻訳:エァクレーレン)
Ben Hirschler
[コペンハーゲン 10日 ロイター]Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます
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