中国は米大統領選と中国に与える影響をどう見ているのか?
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月7日 16時0分
特に朝鮮半島問題に関して
●アメリカは中国の抗議を無視して、韓国へのTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)配備を進めている。トランプが当選した場合、THAADの配備に関しては、抑制的になる可能性がある。
●しかし、トランプがいま選挙のために、どんなに激しいことを言っていたとしても、アメリカ政府の基本方針があるので、そう大きく変わることはないだろう。たとえば日米安全保障の堅持性を緩めるとか、朝鮮半島問題に介入しないとか、そういった極端なことは起きないだろうと思われる。
●ただし、韓国の朴槿恵大統領のスキャンダルがあり、韓国の信頼は地に落ちているので、アメリカが朴槿恵政権と約束したことが、そのまま継続するとは思えない。
●アメリカのアジア回帰にとって、朴槿恵のスキャンダルは大きな痛手だろう。朴槿恵は後半では中国を捨ててアメリカに寄り添う道を選んでしまっているので、中国に対する痛手は小さい。
●朴槿恵のスキャンダルは、アメリカが北朝鮮問題を口実としてアジア回帰するたくらみに打撃を与える。その意味で、トランプが当選すれば、アメリカが受ける打撃を小さくするだろう。
経済問題に関して
●トランプは選挙演説で、中国の製品がアメリカに入って来ないようにするために、中国製品に45%の関税をかけると言っている。アメリカ経済を復興させるために、彼なら実行する可能性が大きい。となれば、中国経済は大きな打撃を受ける。
●ヒラリーもまた、それに対抗して、15%にまで引き上げると言っている。いずれにしてもアメリカは、中国の廉価な製品がアメリカになだれ込んだために、アメリカの中産階級の生活が侵されたとしており、どちらが当選しても、アメリカへの中国の輸出は厳しい局面を迎えるだろう。試算によれば31%減少する可能性があるとの予測もある。
●TPPに関して、二人とも反対の姿勢を取っている。ヒラリーは現役時代には賛成だったのに、選挙のために反対を表明し始めた。TPPには、経済的に中国包囲網を形成しようという意図が含まれている。そのTPPが、主導国のアメリカから崩壊するのであれば、中国にとっては非常に有利になる。
●外交面だけでなく、経済面においても、アメリカはアジア回帰と中国包囲網形成のために、膨大な経費を注ぎ、自国民に多大な犠牲を払わせてきた。そのツケが国内経済と中産階級の弱体化を招いてきたという側面もある。「世界の警察」というアメリカの時代は終わっている。アメリカのプレゼンスを国際社会で見せつけるために国民の税金を使わずに、自国の体力を強化することに注げば、長期的には、その方が中国にとっては脅威となる。
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