スー・チー氏の全方位外交と中国の戦略
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月8日 7時0分
中国もまた、日米に負けてはならじと、8月16日の訪中の際は、党内序列ナンバー1の習近平主席だけでなく、ナンバー2の李克強首相も会談をして歓迎の意を尽くした。
まるで訪日前のダメ押しでもするかのように、10月16日にもインドのゴアで、習近平主席はスー・チー氏と首脳会談を行っている。この時の中国における華々しい報道の仕方から、いかに力を入れていたかがうかがえる。
スー・チー氏訪日に対する中国の分析
スー・チー氏が11月2日、安倍首相と会談し、日本側から今後5年間で官民合わせ8千億円規模の支援を得ることを取りつけたことに関して、CCTVは「メディアの焦点」という番組で、以下のように分析している。
●日本は自国の財政難を顧みず、中国と競争するために、中国が投資した国の後を追って無理して投資している。日本の国家予算の3分の1から半分が国債発行により賄われているというのに。
●日本の支援の質は低い。支援の90%が円借款で、日本産の製品を購入しなければならないという制限が付いている。
●日本の対ミャンマー貿易額はわずか18億ドルだが、中国の場合は147億ドルで、日本の数倍。これに勝てるはずがない。
●中国がアフリカに投資すると日本もアフリカに、フィリピンに投資するとフィリピンにという形で、日本は中国を追いかけてきているが、これは冷戦構造的考え方で、日本は必ず失敗する。
これらに対してネットでは、「習近平が外国の首脳と会談すると怖い。われわれ国民の税金をばらまくことしか考えてないからだ。日本は中国のように腐敗で巨額の金額が消えていかないし、貧富の格差も中国ほどひどくないだけ、まだ良いんじゃないか?」という趣旨のコメントが少なからず見られた。
ミャンマー国防軍ミン・アウン・フライン総司令官の訪中
スー・チー氏が1日、羽田空港に到着したそのころ、一足先に北京空港に着いていたミャンマー国防軍ミン・アウン・フライン総司令官は、人民大会堂で習近平国家主席と会談を行っていた。その様子は、中央テレビ局CCTVで大々的に報道された。
新華網にはCCTVの動画とともに文字化した文章もあり、また中国の中央行政省庁の一つである国防部(防衛省に相当)のホームページなど、多くの政府側ウェブサイトに掲載された(「ミン・アウン・フライン」は中国文字で「敏昂莱」と書く)。
習近平は国家主席および中央軍事委員会主席としてミン・アウン・フライン国防軍総司令官と二人で会い、人民大会堂の客人を迎える部屋で、二人が中央に座って(随行者は脇に座る形で)会談していることが見て取れる。その直前に会談した台湾・国民党の洪秀柱主席との「そっけない扱い」とのギャップが印象的だった。
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