ISISは壊滅する
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月7日 20時0分
<ISISに未来はない。無謀な夢で若者を引き付けようとするテロ組織は、欧米のアナーキストたちがそうだったように、短命を運命づけられている。ISISは所詮、イラク戦争後の権力の空白のなかでたまたまのし上がったあだ花に過ぎない>
ほとんどの軍事専門家は、テロ組織ISIS(自称イスラム国、別名ISIL)からのモスル奪還は時間の問題だという見方で一致する。
モスルはイラク第2の都市で、14年6月にISISに制圧された。面積はほぼイギリスと同じ大きさだ。だが16年10月16日、イラク軍兵とクルド人民兵を中心とした部隊が、ついにモスル奪還作戦を開始した。
【参考記事】ISIS指導部「最後の1人になっても死ぬまで抵抗せよ」
14年当時にISISがイラク北部での進撃に成功したのは、軍事的に優れていたからではない。むしろISISは、イラク政府軍が崩壊状態に陥り、シーア派中心のイラク政府に対してスンニ派が不満を抱えて対立した隙を付いて躍進。同じスンニ派住民が多数を占める地域で勢力範囲を拡大していった。
だがその後、15~16年にかけて、ISISはイラクの支配地域の半分を失った。イラク北部のティクリートや西部ラマディ、中部ファルージャ、イラク東部とつながるシリアのパルミラや北部のコバニといった要衝を次々に奪還された。
モスルの後、連合軍の次のターゲットはISISが首都と称するシリア北部のラッカだ。いよいよISIS支配下の「カリフ国」が壊滅するとの期待が高まっている。
そうなればISISの行方は一体どうなるのか。領土を捨てても生き残れるのか。別の場所で組織を再編するのか。それとも壊滅するのか。
5つのシナリオ
シナリオ1)ISISは地下ネットワークを構築し、将来再び出現する
可能性は極めて低い。ISISが14年以降の戦闘で勝利を収めて台頭した背景には、特殊な状況が重なった。当時はシリア内戦による政治的・軍事的な空白があり、イラクのヌーリ・マリキ政権が指導力を欠き、イラク政府軍も弱体化し、世界がようやくISISの野望に気が付いたときにはもう手遅れだった。このシナリオは、ISISを利した当時のこうした事情を無視しており、今後この地域で同じ状況に陥る可能性は低い。
【参考記事】モスル奪還に成功してもISISとの戦いは終わらない
シナリオ2)ISISは別の場所で組織を再編する
ここ数年ISISは欧州や北米、リビア、イエメン、シナイ半島などに拠点を分散させてきた。リビアを含めいくつかの地域では、シリアやイラクから戦闘員を勧誘して直属の新たな拠点を立ち上げた。その他の地域では、既存のテロ組織がカリフ国へ忠誠を誓うケースもあった。西アフリカのイスラム過激派「ボコ・ハラム」はその最たる例だ。
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