自治体ごとの出生力の多様性:出生数・出生率のデータを細かく見てみる
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月28日 17時20分
参考までに、生産年齢女性比率が0.4より大きいか小さいか、同人口が5万人より多いか少ないかの2つの基準で、自治体を3つのタイプに分けてみました(比率が0.4より低くて同人口が5万人より多い自治体は30個しかなかったので、ここでは考慮していません)。これらのカテゴリーごとにいくつかの数値の平均値を出してみました(表2)。
表2 生産年齢人口女性カテゴリーごとのいくつかの平均値(産業従業者比率のみパーセンテージ)
2番目のカテゴリーの自治体は、若い女性を含めた人口規模はそれほど大きくないが、若い女性の人口割合も高いという場合です。たいていは大都市近郊にあるベッドタウンです。この場合、それほど悩む必要はないかもしれません。人口に見合った福祉・公共サービスを維持できる見込みが相対的に高いからです。課題は、若い女性の流出をいかに「食い留める」ことができるかにあるでしょう。
より深刻なのはその他の2つのパターンです。表の一番上のカテゴリーは、若い女性が絶対数も比率も少ない自治体ですが、これらの自治体は三世代世帯比率も高く、また農林水産業が中心です。課題は、若い女性の流出を留めることに加えて、「呼びこむ」ことにあるでしょう。
東京都の自治体に典型的ですが、若い女性がたくさんいて、人口比も大きい自治体(三番目)の場合、若い女性を吸収する力はあるので、いかに出生率を上げていくのかが課題でしょう。
さらに、こういった全国都道府県水準における多様性と同等以上に、都道府県<内>の自治体の多様性がある、ということを再確認しておく必要があります。「うちの県は総じて◯◯といった課題がある」ということ以上に、都道府県内の各自治体の課題が異なってくる、ということです。
■三世代世帯比率
次に、この多様性は必ずしも地域の都市度といった一律の基準によって説明できるとは限らないという点にも注意が必要です。つまり、同じ都市度の自治体でも、地域に応じた特色がある、ということです。
たとえば三世代同居と出生率の関係を示した下の図4をみてください。
図4 三世代世帯の比率と出生率
全体的な傾向としては、同じ三世代世帯の比率の自治体でも出生力は多様であることがわかります。都道府県の個体特性と自治体人口規模を統制した回帰分析(固定効果推定)をすると、三世代世帯比率は出生力に有意な効果を与えません(ただ、これはマクロデータの分析なのでかなり大きな留保が必要ですが)。
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