給料が安いと感じているあなたは、おそらく影響力が足りない
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月29日 10時42分
本書に詰まっているのは、ビジネスコンサルタントとしての10年以上の経験の成果だ。私は世界中の有力者と間近に接する機会に恵まれている。私が教える戦略のほとんどは自分の目で観察したものだが、なかには親切なクライアントから伝授されたものもある。取材に当たって、彼らの多くは匿名を条件にしたが――有力な立場の人間が、自分の「手口」を明かすことの意味を自覚している証拠だ――影響力を勝ち取り、磨き、効果的に使用する方法についてのその発言は、ほぼ言葉どおりに引用している。
【参考記事】日本人の「自信がない」は嘘、原因は「感染」にあり!?
本書は影響力をめぐる4つの神話を追放する。
第一の神話は「影響力とは、スピーチやフルート演奏と同じ」。つまりテクニックを習得すれば、どんな状況でも応用できる。影響力は誰かに働きかけるプロセスだ、上司と30分話す時間をくれたら、催眠術のように「影響を与えて」考えを変えてみせる――ばかなことを。30分間の会話で上司を動かせるとしたら、それはおそらく「信頼できる部下」という評価をすでに確立していたから。その場の思いつきで口にした言葉のおかげではない。影響力獲得は、時間をかけて徐々に信頼を積み上げていくプロセスだ。それは戦略であって、スキルではない。
第二の神話は「影響力を望む者は現代のマキャヴェリになれ」。すなわち、目的達成のためならなんでもする、邪悪で狡猾な人間になれということだ。ぞっとする事件を描いて、時にベストセラーになるノンフィクション作品も、この「いかにも」な人物像を強調する。だが、真実はもっと平凡だ。確かに、影響力を固めるには冷酷になるべきときもある。敵を飼い馴らすことも必要になる。それでも影響力を手にするには、よい資質を発揮したほうがずっと効果的だ――たとえば豊かな想像力、厳しい職業倫理、協調性を。策略という「黒魔術」に頼っても、結果に失望するのがおちだろう。
【参考記事】部下の話を聞かない人は本当のリーダーではない
第三の神話は「影響力はハードワークと誠実な努力のたまもの」。この神話はたぶん、普及度がより高い。時間を費やし、正しいことをし、ささやかな実績を積み上げれば、必然的に影響力を手にするという考え方だ。これは希望的観測にすぎない。本書のために話を聞いた人々のほとんどは、次の2つのカテゴリーに当てはまる。何かに秀でた人物――専門家や専門職の従事者――か、人や状況をうまく動かして目的を達成できる人物だ。ものを言うのは計画や才能。時間を費やせばオーケーではない。
この記事に関連するニュース
-
プロジェクト成功の可否を握るのは「計画立案」。期限も予算も大幅に崩れたシドニー・オペラハウスと理想通りに進んだビルバオ・グッゲンハイム美術館の決定的な差とは
集英社オンライン / 2024年5月18日 8時0分
-
シドニー・オペラハウスの建造が「当初5年の予定が14年、総工費が15倍」に膨らんだ計画立案の悲劇から学ぶこと
集英社オンライン / 2024年5月17日 8時0分
-
指示しても「部下に動いてもらえない上司」に欠けている3つの態度
PHPオンライン衆知 / 2024年5月2日 12時0分
-
社歴を重ねた実務家社長が戦略で暴走する理由 「既存事業のテコ入れ策」ばかり見えすぎる罠
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 10時30分
-
Aoba-BBT社長、柴田巌の最新書籍が5月22日(水)刊行『未来をつくる人と組織の経営戦略』
PR TIMES / 2024年4月30日 11時15分
ランキング
-
1イラン大統領ら乗ったヘリが山中に不時着、安否不明…悪天候と濃霧で救助隊が現場到着できず
読売新聞 / 2024年5月20日 0時5分
-
2イスラエル 政権内の亀裂深まる、戦時内閣メンバー・ガンツ前国防相 ネタニヤフ政権に戦闘終結後のガザ統治など行動計画要求「策定しなければ離脱」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月19日 12時27分
-
3敵前上陸「地上の地獄だった」 対ロシア渡河作戦、兵士ら証言
共同通信 / 2024年5月19日 20時8分
-
4「社会へ強いメッセージを伝える人に与えられる」“建築界のノーベル賞”プリツカー賞授賞式に山本理顕さん出席 日本人9人目の快挙
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月19日 11時13分
-
5日本政府の態度「反文明的」 徴用工巡り、韓国前大統領
共同通信 / 2024年5月19日 18時56分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください