トルコという難民の「ダム」は決壊するのか
ニューズウィーク日本版 / 2016年11月30日 17時30分
トルコが最初にEU加盟の申請を行ったのは1987年のことだ。それからすでに30年近くの年月が経過している(当時はEUではなくEC)。
これまでEUは一貫してトルコがEU的な価値観に適応すること、人権や法の支配を尊重することを求めてきた。トルコもそれに呼応して、2002年の死刑制度廃止など、少しずつ国内の人権問題を片付けてきた。
しかし、いま起きていることはそれとは真逆の動きであるように見える。
トルコはEUだけが選択肢ではないということをあからさまに発言するようになり、EU側もそれに応じてトルコを仲間に加えることを諦める兆しを見せ始めている。未来のことを予測することは難しいが、世界で起きている変化の流れを理解しようとすることはできる。
トルコのダムが決壊しないという保証はどこにもない。私たちの暮らしや価値観が拠って立つ基盤は想像以上に脆く、日々動揺している。だから、常に見て、考え続ける必要がある。
○参考文献
・欧州複合危機 - 苦悶するEU、揺れる世界 (中公新書):遠藤乾
ユーロ危機、難民危機、安全保障危機、イギリスEU離脱という4つの複合危機としてヨーロッパの危機を捉え説明する稀有な一冊。非常に勉強になる本。
・難民問題 - イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題 (中公新書) :墓田桂
やや保守的な論調にときたま違和を感じることもあるが、現在発生している難民問題にまつわる様々な事実や論点を一気に勉強にするには最適の一冊。
・【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書):池内恵
民族や難民という視点でトルコの歴史を振り返るのに最適な一冊。池内先生の著書はどれもおすすめ。
[プロフィール]
望月優大
経済産業省、Googleなどを経て、現在はIT企業でNPO支援等を担当。慶應義塾大学法学部政治学科、東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了(後期フーコーの統治性論・新自由主義論)。様々なNPOの広報支援に携わりつつ、国内外の社会的テーマに関するブログを更新中。特に貧困・社会保障、移民・難民問題、ナショナリズム・国家論など。1985年埼玉県生まれ。
ブログ:HIROKIM BLOG / 望月優大の日記
Twitter:@hirokim21
※当記事はHIROKIM BLOG / 望月優大の日記からの転載記事です。
望月優大
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