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AIにできない人間のミッションは、答えのない問いを模索すること

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月9日 14時24分

 アルファ碁が韓国のプロ囲碁棋士であるイ・セドルと対戦したとき、人間を上回るクリエイティブな手を打って世間を驚かせました。トレーニングすることでコンピュータにクリエイティビティを発揮させるのは可能なのです。また、新しいシステムを作ってより高次のクリエイティビティを持たせることもできます。音楽やアートなどではすでに行っていますが、自律的に創作活動するようにプログラミングするのです。モーツァルトのスタイルで作曲するコンピュータの作った楽曲は、専門家もそれと区別できないレベルです。

 多くのクリエイターはガーデナーのような存在になるかもしれません。まずプロセスを作り、それから生成していく。直接クリエイトするのではなくて、ものを作るシステムを構築することで間接的にクリエイティブに関わるということです。

 となると、我々人間に残されるクリエイティブなこととは何か。それは質問することです。クリエイティブの基礎にあるのは、これはできるのか、やったらどうなるかというような探索的なスキルです。決まった答えがあるときは機械に聞けばいい。人が得意とするのは、自由回答の形で好奇心からするような質問です。考えても答えが分からない、迷っているような領域を探求することです。

 質問することの方が答えを出すより価値があるのです。答えはAIがくれますからね。今後、クリエイティブの仕事は生産的な質問ができるかどうかが問われてくると思います。

進化したAIと共存する未来では、人間のアイデンティティが揺らいでいく

――AIが電気のように世の中に普及していくということは目新しいものでなくなるということ。人間とAIが協働する未来は、あまりワクワクするようなものではないのでしょうか。

ケリー: その通りです。未来のテクノロジーは退屈でつまらないものになるかもしれません。それについてもう意識をしないということは成功しているということです。

 第一次産業革命では、工場で使われているような巨大なモーターが小型化して家庭用に普及していきました。今はいくつもの小さなモーターが家庭のあちこちの家電に埋め込まれ、我々はその存在を全く意識していません。AIも同じで、見えなくなることが成功の証です。意識しない存在になる可能性が高いでしょう。

 もう1つ言えることとしては、AIと共存する社会になると人間のアイデンティティが変わってくると思います。先ほどのクリエイティブの話のように、人間こそクリエイティブだと思っていたのに、マシンの方がクリエイティブだとしたら、我々のクリエイティビティが問い直されることになるわけです。テクノロジーの進化は、我々は何か、何のためにここにいるのかを考え直すことを迫るのです。

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