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フランス大統領選、英米に続くサプライズは起きるか?

ニューズウィーク日本版 / 2017年1月10日 12時31分

フィヨン選出の「驚き」

 さらに、権力の空白を間近にして、大きなサプライズは保守ゴーリスト(ドゴール派)政党・共和派の側で起きていた。大統領候補を決するための11月下旬の公開予備選では、下馬評を覆してフランソワ・フィヨン元首相が勝利、候補者に指名された。一般有権者も投票権を持つこの公開予備選は、11年に現与党の社会党が自党候補者を選出するのに採用し、これが多くの有権者を動員したことから、共和派でも同種の予備選が用いられた経緯がある。

 7人の候補者のうちでは、中道からの支持も厚いアラン・ジュペ元首相、さらに一般党員の人気の高いサルコジ前大統領が有利とみられていたものの、第1回投票と決選投票で首位に立ったのはサルコジ政権下で首相を務めたフィヨン氏(同07~12年)であり、これは国内外で大きな驚きを持って受け止められた。



 フィヨン氏は予備選で経済的にはリベラル、社会的には保守の組み合わせを掲げて他候補との差別化を図ったことが功を奏した。加えて、ジュペ対サルコジというヘビー級政治家同士が互いのつぶし合いに終始し、フィヨン氏が漁夫の利を得ることができた。選挙で敗れた過去の大統領(サルコジ氏)が予備選に出るということ自体も異例だが、その大統領の影で5年間にわたって丁寧な物腰で首相を務め上げ、クリーンなイメージを保ってきたのもフィヨン氏に支持が集まった理由として挙げられる。

 もっとも、フィヨン氏が掲げた公務員50万人削減、疾病保険民営化、同性婚者の養子縁組反対の姿勢、また外交での親ロシア寄りの姿勢などは、400万人以上の投票者(フランスの登録有権者数は4300万人)を動員した保守陣営内の支持を狙った結果でもある。実際にフィヨン氏を中心的に支持したのが、FN支持者とも重なる男性高齢者層と分析されていることからも、中道票を集めなければならない本選に向かって、今後は政策の中道寄りに軌道修正を図っていくことが予想される。

バルス、マクロン...社会党の「混乱」

 フィヨン氏の今後の立ち位置は、オランド大統領の出馬辞退の後、社会党の候補者指名を誰が獲得するかにも懸かってくる。

 与党の側からオランド後の権力の空白を埋めようとしているのは、大統領の下で14年から首相を務めたマニュエル・バルス氏だ。彼はオランド大統領の不出馬表明の直後に、首相職の辞任と公開予備選への出馬を表明した。この社会党を中心とする左派陣営の公開予備選は1月22日(第1回投票)、29日(決選投票)に予定され、社会党以外の小政党の候補者を含めて計7人が立候補している。顔触れを見ると、有力候補のうちバルス氏の知名度が最も高く、政策も最も中道に位置しているが、緊縮政策を進め治安対策でも強硬派だったことから、左派支持者の中には忌避感を持つものも多いとされている。

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