フランス大統領選、英米に続くサプライズは起きるか?
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月10日 12時31分
保革の候補者が自陣営を固めた上で中道票を狙って穏健化していくのは仏大統領選の一般的なパターンだが、今回は保革両翼で公開予備選が導入されたことで、このパターンが入れ子構造となって、より複雑な展開を見せている。また、共和派の予備選にとどまらず、英労働党でもそうであったように、多くの先進国ではリーダー選出に一般有権者が参入するようになると党派性がよりラジカルになる傾向が見られ、そうした観点から、左派陣営の予備選の行方も予断を許さない。
与党・左派陣営にとってのもう一つの波乱要因は、バルス内閣で経済相を務めていた弱冠39歳のマクロン氏だ。彼は16年8月に経済相を辞任、自らの政治運動「アン・マルシュ(前進)!」を立ち上げ、経済リベラル・社会リベラルの旗を掲げて、中道から左派陣営を固める戦略に打って出た。
これは70年代に「フランスのケネディ」と言われ、やはり経済通で鳴らしたヴァレリー・ジスカールデスタン大統領が、中道から保守陣営を固めた選挙戦略とも類似している。若くてハンサム、さらに既存政治家とは距離を取るマクロン氏に対する若年層からの支持は厚く、本選の第1回投票を見越してどれほど左派中道票を奪うかによって、保革両政党の候補者の戦術は対応を余儀なくされるだろう。
ルペンの「ガラスの天井」
もっとも、最大の焦点はFNのルペン候補が選挙で獲得する票数である。各種世論調査を見ても、第1回投票でのルペン氏の得票率は20~25%と、上位2人による決選投票に進むことは確実視されている。12年の大統領選で3位につけたルペン氏のスコアは17.9%だったから、そこからかなりの票を上積みしている。
11年にFNの創設者である父ジャンマリ・ルペン氏の後継者として選出された三女のマリーヌ・ルペン氏は、経済的には大きな政府、社会的には反リベラル路線を徹底し、自由市場・グローバル化・欧州統合に反感を持つ権威主義的保守層と単純労働者、若年失業者など、異質な政治的連合を作り上げることに成功、支持率でも2割から3割を得ている。
一方、FNの伸長は14年の欧州議会選での首位(得票率25%)で確認されたが、その後の15年の地方選では第1回投票で首位に立ちつつも、1議席も獲得することができなかった。これは比例代表で戦われる欧州議会選と違って、2回投票制では保革の選挙協力によってFNに対して2対1の戦いに持ち込むことができるからだ。また、認知度は上がりつつも、依然として世論における反FN感情には根強いものがあり、ルペン氏を支持しないとする有権者も6割以上居る。
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