日本はワースト4位、「経済民主主義指数」が示す格差への処方箋
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月18日 20時40分
<ドナルド・トランプを筆頭に、世界で右派のポピュリスト政治家が台頭している背景には、自由主義経済と格差拡大に置き去りにされ、自分の人生の決定権さえ奪われた人々がいる。つまり、経済面の民主主義を奪われた人々だ。筆者はOECD中の32カ国の雇用環境や社会保障など労働者の自己決定権がどこまで保障されているかを「経済民主主義指数」として数値化した>
昨年、世界はブレグジットやドナルド・トランプに翻弄され、コスモポリタンな社会やグローバル化の実現が一気に後退した。今年大きな脅威になりそうなのが、オランダのヘルト・ウィルダースやフランスのマリーヌ・ルペンに代表される右派のポピュリストたちの台頭だ。すでに不寛容や外国人排斥(ゼノフォビア)、経済の保護主義が育ちつつある。
世の中には、「労働時間の定めがない」雇用契約が氾濫している。米タクシー配車サービスのウーバーやイギリスの出前サービスDeliveroo、「ギグ・エコノミー(単発あるいは日雇いの仕事をベースとした経済)」などがいい例だ。そんな経済環境のなかで、割が良く、家計を安定して支えられる仕事にありつけるかどうかが、グローバル化による勝者と敗者の分かれ道になる。ブレグジットやトランプの勝利を後押しした有権者のデータを掘り下げると、イギリス南部のサウス・ウェールズや同北東部のタインサイド、フランス北部のノールパドカレー、米オハイオ州やミシガン州にまで、衰退したかつての工業地帯で経済的に置き去りにされた人々と重なるのが分かる。
工場の閉鎖や、移民の雇用、海外への雇用流出など、多くの人が経済面の不安を抱えている。しかし自由を奉じるリベラルなエリートはそんなことにはお構いなしに自由貿易を支持し、企業を利するフレキシブルな雇用体系や規制緩和を支持するなど、困っている人々を嘲笑うかのように振る舞う。有権者はそんなエリートに愛想を尽かし、政治的経済的に欠陥だらけだが単純明快な主張を打ち出す「アウトサイダー」のポピュリストに票を託した。
自由を重視するリベラルな民主主義が直面するこうした政治的危機については既に様々な意見が出ているが、それは「経済民主主義」と密接につながっている。経済活動に関する決定権を社会で広く分散し、人々が自らの人生に主導権を持って金銭的な安定を確保できるかを測る指標だ。筆者はこれまで、国による経済民主主義の度合いを比較分析するプロジェクトに携わってきた。そこから浮かび上がった結果は、世界の現状を反映すると同時に、今後の方向性を占うのに大きなヒントになる。
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