トランプの人種差別政策が日本に向けられる日
ニューズウィーク日本版 / 2017年1月31日 17時41分
今後、もし日米間の経済交渉が暗礁に乗り上げ、あるいは米軍の駐留問題で合意に達しなければ、そしてトランプ大統領自身が満足するような結果が得られなかったと判断したら、日本への制裁措置として、日本人への入国審査の厳格化や入国禁止措置を講じないとは断言できないのである。
あるいは中国との著しい貿易赤字の解消ができずに、アジア人を十羽ひとからげにして、法律も国籍も関係なく、日本人に対しても攻撃の矛先を向けてくるかもしれない。
唯一の救いは、アメリカ市民には良心と理性が今も健在なことだ。極端な大統領令の連発に反発する人々の抗議活動は日増しに広がり、国政を左右するほど盛り上がりつつある。
30日夜、トランプ大統領は、大統領令の実施に異を唱えた司法省のイェーツ長官代理を解任した。国務省や議会とも対決姿勢を強めつつある。事態はまだ流動的で、どんな事態が発生するのかわからない。
目下アメリカのメディアを激しく罵り、露骨に敵視し、諸外国との国際摩擦も恐れていない様子のトランプ大統領だが、このうえアメリカ国民まで罵るようなことがあれば、アメリカ大統領としては、もう先がないのではないだろうか。
[執筆者]
譚璐美(タン・ロミ)
作家、慶應義塾大学文学部訪問教授。東京生まれ、慶應義塾大学卒業、ニューヨーク在住。日中近代史を主なテーマに、国際政治、経済、文化など幅広く執筆。著書に『中国共産党を作った13人』、『日中百年の群像 革命いまだ成らず』(ともに新潮社)、『中国共産党 葬られた歴史』(文春新書)、『江青に妬まれた女――ファーストレディ王光美の人生』(NHK出版)、『ザッツ・ア・グッド・クエッション!――日米中、笑う経済最前線』(日本経済新聞社)、その他多数。新著は『帝都東京を中国革命で歩く』(白水社)。
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)
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