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ロシアとトルコの主導で、シリアは和平に向かうのか?(前編)

ニューズウィーク日本版 / 2017年2月6日 17時30分

今回のシリア戦争で、アサド政権に対抗する反政府組織にアメリカは武器供与の形で貢献したものの、戦闘の前面に出ることを避け続けた。イスラエルにとっては、反政府側の無数のスンナ派ジハード組織が力を付けていくことなど悪夢以外の何物でもなかった。アサド政権側もシーア派のイスラム組織であるヒズブッラーの支援を受けている。イスラエルにとってヒズブッラーは共存を拒否する敵であるから、アサド政権側にヒズブッラーの陰がちらついていくと即座に攻撃している。イスラエルにとって、スンナ派であれシーア派であれイスラム主義を前面に掲げている組織が隣国シリアに台頭することを決して認めない。アサド政権は世俗的な政権であるがゆえに、イスラエルにとって好ましいのである。

したがって、アメリカがイスラエルの期待に反して反政府側のジハード組織を支援し、アサド政権打倒に動くことなどあり得なかった。アメリカが武力行使に出る気配を見せたのは2013年の8月、アサド政権軍による化学兵器の使用で反政府側に1300人近い犠牲者を出したときだった。人道主義を重視したオバマ政権は、アサド政権の人道の罪に対して軍事介入も辞さずという姿勢を示した。その前からアサド政権が化学兵器を保有していたことをつかんでいたアメリカは、化学兵器の使用が最後の「一線」であることを通告していた。実際、オバマ政権はあと一歩で攻撃というところまでいったが、英国議会がアサド政権攻撃への協力を否決したため実現しなかった。英国にとっては、イラク戦争の轍を踏みたくないという消極論が強かったのである。

だが、ここでロシアが動き始める。ラヴロフ外相はシリアのムアッリム外相から化学兵器全廃の約束をとりつけ、それをもってアメリカ政府を説得した。全廃というのだから、少なくとも「保有していた」ことが前提となる。その年のノーベル平和賞に化学兵器禁止機関OPCWが選ばれたことを覚えている読者も多いだろう。この国際機関がアサド政権側の化学兵器を無力化したことの功績であった。



ロシアとシリア、どちらか主人だったか?

ロシアとシリアの協力関係は、ロシアにとってはソ連時代、シリアにとっては現大統領の父、ハーフィズ・アサド大統領の時代にさかのぼる。ハーフィズは軍内部で実権を掌握し1971年に大統領となった。冷戦の時代から、ソ連はシリア国内に基地をもっていた。地中海岸のタルトゥースが有名だが、現在はアサド政権の基盤であるラタキアにもある。1980年代、シリア軍は対イスラエル防衛のためにミサイル基地をいくつも持っていたが、いうまでもなく、そこに配備されていたのはソ連製のミサイルであり、同時に、ソ連の軍事顧問団を置いていた。冷戦構造という図式的な理解をするなら、シリアがソ連の陣営にあり、イスラエルがアメリカの陣営にあって互いににらみ合うという構図になる。

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