ロシアとトルコの主導で、シリアは和平に向かうのか?(前編)
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月6日 17時30分
シリアで多数を占めるのはスンナ派ムスリムである。アサド家の信仰はアラウィ派という少数宗派だが、政権は世俗的でイスラム主義を拒否していた。犠牲者の多くがスンナ派だったため、チェチェン、アフガニスタン、イラク、エジプトなどから、ありとあらゆるスンナ派ジハード組織が死に場所を求めて入り乱れて乱入した。彼らの通行を黙認したのはトルコである。反政府勢力側には、トルコ、カタール、サウジアラビア、アメリカなどが武器や資金面で支援をしていた。2015年後半あたりから、ロシア・イランはアサド政権側への軍事支援を強化したから、ここ2年の間は、内戦というよりも戦争というべき事態に陥った。アサド政権は、一貫してこの反政府勢力の攻撃を「テロ」と断じているから、いかに残虐な手段で自国民を殺害しても、それはテロとの戦いにつきものの「やむを得ざる犠牲」にすぎないとの立場をとり続けた。
<後編に続く>
≪執筆者≫
内藤正典(同志社大学大学院教授)
1956年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科科学史・科学哲学分科卒業。社会学博士。専門は多文化共生論、現代イスラム地域研究。一橋大学教授を経て、現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授。著書に『イスラム――癒しの知恵』『イスラム戦争 中東崩壊と欧米の敗北』(ともに集英社新書)『ヨーロッパとイスラーム』(岩波新書)『トルコ 中東情勢のカギを握る国』(集英社)など多数。
内藤正典(同志社大学大学院教授)
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