難民を敵視するトランプ時代を、亡命チベット人はどう見ているか
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月24日 15時32分
政治的リベラリズムは容易に後退しないとセンゲ大臣は断言した。民主主義への厚い信頼を感じさせる言葉だが、新たな経済的ナショナリズムが亡命チベット人社会に影響を与える可能性はないのだろうか。
◇ ◇ ◇
センゲ大臣:
「現時点では政治的自由主義や人権のための"空間"が国際社会で確保されていると思います。その空間は1年前や10年前と比較しても変わりません。しかし、経済的ナショナリズムやポピュリズムに関する言説が国際世論を席巻しているため、見えづらくなっているとは言えるでしょう。
不幸なことに、9.11以降、多種多様なテロ行為が増加しました。哲学では「暴力では暴力を終わらせられない」といいます。毎年テロが増えているのは、暴力によって対応しているからです。非暴力を信じるダライ・ラマ法王に仕える身としては、「もし目標が非暴力ならば、そこにいたるプロセスも非暴力的であるべきだ」と言いたいですね。
ともあれ、難民危機や経済的ナショナリズム、ポピュリズムの台頭によって、チベット問題は脇に追いやられた部分はあるでしょう。しかし、国際社会は人権問題に対する関心を持ち続けています。我々は世界に向けて、民主主義も人権も普遍的だと訴え続けていかなければなりません」
インタビューに答えるセンゲ大臣 撮影:筆者
トランプ政権は「中国に対して現実的」
アメリカにトランプ新大統領が誕生したが、慣例を破って台湾総統と電話会談を行ったかと思えば、先日の習近平中国国家主席との電話会談では、従来の発言を翻して「一つの中国」政策の尊重を表明するなど、その対中国政策はきわめて不透明だ。トランプ時代のアメリカはチベット政策についても大きく変更するのだろうか。
◇ ◇ ◇
センゲ大臣:
「レックス・ティラーソン新国務長官は就任演説でチベット問題に対する支持を継続すると表明し、またダライ・ラマ法王に面会すると発言しました。我々もトランプ大統領と新国務長官にお祝いの手紙を送りました。米高官と法王との会談は今後も続きますし、チベットの自由及び「中道のアプローチ」(インタビュー前編参照)に基づく法王と中国政府の対話について、米国は支持を継続するでしょう。
ただし、トランプ氏の政権メンバー、そしてトランプ氏自身の過去の中国に関する発言、フリン国家安全保障顧問(インタビュー後に辞任)やマティス国防長官の発言も見ると、安全保障面ではタカ派がそろっている一方で、中国に対して現実的な見方をしているという側面もあります。
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