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難民を敵視するトランプ時代を、亡命チベット人はどう見ているか

ニューズウィーク日本版 / 2017年2月24日 15時32分

(現実的な対中外交と従来のチベット政策との)対立はあるかもしれませんが、アメリカ政府は日本政府とともに中国に対して人権問題やチベット問題を提起することをためらわないと考えています」

香港が前例か、それともチベットが前例か

ダライ・ラマ14世が提唱する中道のアプローチは、香港の一国二制度を念頭に置いたものだ。ところが中国の全国人民代表大会常務委員会の決議で、香港の議員の免職が実質的に決定されるなど一国二制度は揺らぎつつある。前例となる香港が危機にあるなか、中道のアプローチの有効性も問われているのではないか。

【参考記事】なぜ中国は香港独立派「宣誓無効」議員の誘いに乗ったか

◇ ◇ ◇

センゲ大臣:
「私はいつもこう言います。「中国について理解したければ、チベットの物語を知らなければならない。チベットのことを知らなければ、中国のことは本当に理解したことにならない」とね。

1951年に中国政府とチベット政府の間で「17カ条協定」が結ばれました。これは実質的に一国二制度です。この第4条によれば、「チベットの現行政治制度に対しては、中央は変更を加えない。ダライ・ラマの固有の地位および職権にも中央は変更を加えない。各級官吏は従来どおりの職に就く」とされていました。

我々はこの協定がそもそも中身のないもので、不法なものだと思っています。なぜならば、この協定は力による強要の下で署名されたからです。しかも調印後、協定は毎年骨抜きにされていきました。1959年にはすべての協定が反故にされ、ダライ・ラマ法王はインドに亡命するしか道がなくなってしまいました。

同じように一国二制度が香港に与えられたわけですが、教訓はすでにあるわけです。中国の裏切りはすでにチベットで起きていたことです。香港の人々の懸念は無理からぬところです。

しかし、チベットの状況は違います。中道のアプローチを採択した理由は、現状があまりにひどすぎるからです。チベットでの弾圧は非常に厳しいもので、145人ものチベット人が焼身自殺するほど生活はあまりにみじめです。

最近、中国政府はラルンガル僧院(中国四川省のチベット族自治州にあるチベット仏教の僧院)の一角を取り壊したと伝えられています。そこで1万2000人の僧が5000人に減らされました。漢民族の信者も排除されました。

チベット人にとって、現状はあまりにひどいのです。したがって、完全な自治を求める中道のアプローチが実現すれば大きく改善されます。我々から見れば自由をすでに持ち得ている香港とは状況が違うのです。ただ、中国政府との交渉は一筋縄ではいかないでしょう。我々は1959年に経験済みなのでよく分かっていますし、慎重に交渉する必要はあります」

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