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3.11から6年、セキュリティ専門家が語る原発サイバー攻撃のリアリティ

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月9日 18時15分

<福島の原発事故に関して、サイバー攻撃だったのではないかという陰謀論がネット上には存在する。現実に世界の重要インフラに対するサイバー攻撃の可能性は高まっている>

東日本大震災と同時に発生した福島第一原発の事故から間もなく6年を迎える。

この6年間、著者は何度となく被災地を訪れた。昨年末には、原発事故以来ずっと仮設住宅に暮らし、その間に夫と愛犬を亡くした初老の女性が、やっと仮設住宅を出て新たな生活をスタートしたと聞いたばかりだ。震災前から営んでいた酪農を昨年廃業して、新たな仕事を始めた家族もいる。

被災地はゆっくりだが、確実に前に進んでいると感じている。

そんな現実をよそに、福島の原発事故について、いまだに驚くような陰謀論を主張している人たちがいる。インターネットで少し調べれば、すぐに様々な陰謀論を見つけることができる。その中には、福島第一原発は実はサイバー攻撃による事故だった、というものまである。

【参考記事】<震災から5年・被災者は今(2)> 原発作業で浴びた放射線への不安

最近、アメリカ人映画監督オリバー・ストーンが映画『スノーデン』の宣伝で来日した際にも、元CIAの内部告発者エドワード・スノーデンがストーンに直接、横田基地で働いていた時に日本の民間インフラに監視プログラムを埋め込んだと語っていた、と述べたことが話題となった。そしてこのストーンの発言を福島の原発事故と繋げる論調もネット上にはある。

こうした陰謀論には、どこまで信憑性があるのか。

最近上梓した『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋刊)の取材で、著者は多くの米政府関係や軍関係者などに話を聞いた。その経験から言えるのは、ストーンが語ったように、米政府が日本のインフラに不正プログラムを埋め込んでいる可能性は十分にあるということだ。なぜなら、米政府は同様の攻撃を世界各地でやっているからだ。



米NSA(国家安全保障局)は2013年末の段階で、世界89カ国で8万5000台ほどのコンピューターまたはシステムに、監視プログラムなどを埋め込んで支配下に置いていたことが判明している。そうした作戦を担当しているのが、NSAの先鋭部隊で、米サイバー作戦の最前線にいるTAO(テイラード・アクセス・オペレーションズ)と呼ばれるチームだ。またTAOの中にはさらに能力の高い凄腕たちがいて、彼らはROC(リモート・オペレーションズ・センター)と呼ばれている。こうしたチームの詳細は著書に当たってもらいたい。

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