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エコノミスト誌が未来のテクノロジーを楽観視する理由

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月10日 11時54分

未来を描く物語は、ユビキタス(偏在的)なAIや寿命を延ばす若返り技術、太陽系の惑星の植民地化が実現したとき、あるいは人類の細分化が起こって「ポスト人類」というべき新たな種が登場したとき、世界はどうなるかというビジョンを示しているというのだ。それは、長期的に出現しうるさまざまな結果を俯瞰するのに便利な手段だとも。

多くのSF作品は一見未来を描いているようで実際には現在を描いており、コンピュータへの過度の依存、あるいは環境破壊といった、今日的なアイデアや懸念と向き合っている。幅広いSF作品に触れることで、より柔軟に未来の技術的あるいは社会的シナリオを描けるようになる。(29ページより)

ただしSFはテクノロジーの進歩に対する見方や議論を形づくり、はからずもそれを制約することもあるのだという。たとえばSF世界のロボットと現実世界のそれはまったく違うため、SF世界のロボットをまねようとすると、ロボット工学は誤った方向に進みかねないというのだ。

しかし、だからこそ20世紀半ばのSFの古典を読み、そこにどのような未来の読み違いがあり、それはなぜなのかを考えることに意味があるというのである。



さて、スタンデージはこうした考え方に基づき、2050年の技術を予測している。

・仮想現実(VR)は、パソコンではなくスマートフォンが中核的デバイスとなる。ヘッドセットを持ち歩くことが当たり前のものとなるが、子どもへの悪影響など倫理的議論も巻き起こることに。

・自動運転タクシーの登場で、都市の車両数は90%減少する。その結果、途上国では車の「保有」よりも「共有」が一般的に。

・民間の宇宙テクノロジーが進歩し、ロケットの打ち上げ費用が劇的に下がる。21世紀中に宇宙旅行産業が当たり前のサービスになる可能性も。

・遺伝子編集技術が進歩し、遺伝子から遺伝子操作へと実践のステージが変化。結果として「デザイナー・ベビー」の誕生や、遺伝子の自己操作をどこまで容認するべきかなどの議論が起こる。

すべて現時点で台頭しつつあるものなので、実際にどうなるか断定できないことはスタンデージも認めている。しかしそうはいっても、かなりの高確率で実現しそうなことばかりではある。

【参考記事】AIはどこまで進んだか?──AI関連10の有望技術と市場成熟度予測

このように、本書ではそれぞれの分野についてかなり具体的な予想がなされている。そして見るべき点は、それぞれの論調が決して悲観的ではないことにある。

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