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エコノミスト誌が未来のテクノロジーを楽観視する理由

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月10日 11時54分

たとえば食糧問題を扱った第7章「食卓に並ぶ人造ステーキ」において『エコノミスト』科学技術担当エディターのジェフリー・カーは、「世界人口は約100億人に達するが、食糧危機は起こらない」と断言している。細胞培養を通じ、多くの食品が工場で製造されるようになるから、というのがその理由だ。

なお、こうした楽観論については、訳者があとがき部分で解説しているので、その部分を引用しておこう。

 この姿勢は『2050年の世界』から引き継がれたものでもある。同書の冒頭で(筆者注:編集長のダニエル・)フランクリンは「暗い見通しが好きな未来予測産業の大多数とは対照的に、前向きな進展の構図を描き出そうとした」と書いている。もちろん執筆陣はテクノロジー至上主義者ではなく、テクノロジーのもたらす危険性も重々承知している。フランク・ウィルチェック(筆者注:第5章「宇宙エレベーターを生み出す方程式」を執筆しているマサチューセッツ工科大学〔MIT〕物理学教授)は核戦争、生態系の崩壊、AI戦争を最も重大な「故障モード」と称し、警鐘を鳴らす。 それでも執筆陣が楽観的な姿勢を貫くのは、人間には未来を選択する力があるという信念からだ。(379ページより)

それは、最終章「テクノロジーは進化を止めない」において繰り返し語られている「テクノロジーに意思はない」という言葉にも現れていると訳者は分析する。「テクノロジーに意思がある」という考え方は、たしかに私たちを不安にするだろう。しかし、未来において不可避なものはひとつもないと本書は主張しているのである。

必要以上の不安感に邪魔されることなく、冒頭で触れたように心を躍らせながら読み進めることができるのも、きっとそうした考え方のおかげだ。

【参考記事】ドローンは「自動車のない世界に現れた電気自動車」なのか


『2050年の技術
 ――英『エコノミスト』誌は予測する』
 英『エコノミスト』編集部 著
 土方奈美 訳
 文藝春秋


[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダヴィンチ」「THE 21」などにも寄稿。新刊『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)をはじめ、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)など著作多数。

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印南敦史(作家、書評家)


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