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対北経済制裁をいかに効かせるか、過去の中国の「失敗」に学ぶ

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月17日 16時43分



非現実的な物語の根底にある政治的な意図はともかく、それから導き出される「最適解」は昔も今も大差ない。つまるところは「現状維持」である。だが、その現状維持を20年以上も続けたせいで、事態は悪化の一途をたどった。北朝鮮が保有する大量殺傷兵器の脅威は韓国だけでなく、今や日本(そして中国)にまで広がったのだ。

経済制裁は他の手段と組み合わせで

厳しい現実に直面して、さすがに対話一辺倒の現状維持論は影を潜めた。その代わりに、経済制裁強化による「平和的」な問題解決に望みを託す論調が増えた。

金正恩政権に対する経済制裁は効果が期待できるのかどうか。さらに言えば、経済制裁が「軍事制裁の代案」となり得るのかどうか。以下では、この点について再吟味を加える。

その前に、経済制裁について一般的な留意点を二つだけ確認しておく。

一つは、体制の変更や政権の交代ではなく、相手国による特定の政策を変更させることを目的とすること。北朝鮮の場合、核放棄が政策目標となる。経済制裁が内紛や政変につながることがあるにしても、それは副次的な効果にすぎない。その政治的効果を期待できるかどうかは、ひとえに相手国の能力と意思に懸かってくる。

もう一つは、経済制裁は武力行使の対極に位置する「平和的」な手段ではないこと。残念ながら、経済制裁と人道主義は両立しない。「制裁は戦争よりも効く」という意見には、十分に耳を傾ける値打ちがある。制裁では1発の銃声も響かないが、戦争よりも犠牲者が少なく済むとは限らない。深刻な問題は、まるで「狙い撃ち」したかのように相手国の社会的弱者ばかりを犠牲にする副作用が必然的に伴う点だ。

この副作用を最小限に抑える方法は、他の手段との「合わせ技」で、可能な限り早期に目的を達成することである。最悪なのは、目的を果たせないまま、いたずらに経済制裁を長引かせることだ。

習政権の本気度を見極め

米国のトランプ政権は北朝鮮問題で、オバマ政権下の「戦略的忍耐」(現状維持)を放棄する大きな政策転換を図った。16年11月の国連決議に基づき、北朝鮮への経済制裁を格段に強化する積極的な関与政策へとかじを切る。特筆すべき点は中国を経済制裁に同調させたことだ。

今回の制裁は次の二段構えだ。北朝鮮のエネルギーと資金の源泉を断つために、中国が石炭と石油の「禁輸」(人道目的は除外)を仕掛ける。そして、米国が「第三国制裁」や「テロ支援国再指定」の独自制裁の包囲網で抜け穴をふさぐ。

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