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イランはトランプが言うほど敵ではない

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月26日 18時36分

<イラン大統領選で穏健派のロウハニが圧勝した。イラン国民が欧米との和解に票を託した証拠だ>

イランはオランダとフランスに続き、今年穏健派が勝利した世界で3番目の国になった。19日のイラン大統領選で、ドナルド・トランプ米大統領に代表されるポピュリズムやイスラム原理主義のような過激な政治思想を拒んだのだ。

穏健派のハサン・ロウハニ大統領が地滑り的勝利で再選を果たしたことから明らかなように、ヨーロッパとイランの有権者には相違点より共通点の方が多い。どちらの有権者も選択肢には恵まれず、絵空事の選挙公約や庶民の生活には見向きもしない政治エリートに嫌気がさしていたが、だからといって自暴自棄な投票行動には出なかった。

昨年イギリスのEU離脱を決めた国民投票やドナルド・トランプを選んでしまった米大統領選は、有権者に大きな悔いを残した。既成政治家に対する怒りの意思表示として対立候補に票を投じたり、投票を棄権したりすれば、このような結果も招きかねない。極右を退け中道を選んだオランダやフランスはその教訓を生かした。イランの有権者も、同じ過ちを繰り返さないことを選んだ。

【参考記事】歴史的転換点かもしれないイラン大統領選挙

だがトランプがイランについて話すのをを聞く限り、そんな実態はまるで伝わってこない。トランプは先週、初の外遊先に選んだサウジアラビアで、イランは地球上で最も悪意に満ちた脅威だと名指しで非難した。アルカイダやISIS(自称イスラム国)のイデオロギーがサウジアラビアで生まれたことを、トランプのスピーチライターは知らなかったのだろうか。

【参考記事】トランプがイラン核合意を反故にしたら中東では何が起こるか

予測不能のイラン政治

今のところ、イラン政府はトランプのイラン敵視政策を静観している。ロウハニは再選後初の記者会見で、米政権の内情が「落ち着く」まで、イランは対応を待つと述べた。その発言から、アメリカに今より穏健なイラン政策を形成してほしいというロウハニの期待が読み取れる。

イラン大統領選は、この国の政治が今も昔も「予測不能」の一言に尽きると改めて証明した。アメリカの外交筋も常々欲求不満を感じているところだが、イランの外交専門家の予測は手相占いと同じくらい当てにならない。当初はロウハニが再選し2期目(任期4年)を務めるのは楽勝というのが専門家の見方だった。

【参考記事】オバマ政権が期待したイランの穏健化は幻想だ

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