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人類滅亡に備える人類バックアップ計画

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月23日 19時30分

だがそれでも、地球温暖化の影響で今年初めに貯蔵庫周辺の永久凍土が溶け、貯蔵庫の一部が水浸しになったという。

逆にあまり知られていないのは、生物の体の一部を保存する貯蔵庫だ。世界には「冷凍動物園」と言われる施設がいくつか存在する。そこでは胚や卵子、精子の他、近年は絶滅が危ぶまれる動物のDNAも保存している。今のところ、20年以上凍結保存して取り出した胚も卵子も精子も生きていたことが分かっている。

人類再起動にプランBはない

どんな凍結保存にも共通する難点は、凍結に失敗した時点で保存していたサンプルは溶けてしまうことだ。地球上で数百年~数千年にわたって生物素材を保存するのは現実的でない。

だが人類は今、生物の全遺伝情報(ゲノム)を解読することができるようになり、人間のゲノム解析にかかる費用は1000ドルを切った。この手法を使えば、あらゆる生物のゲノムを効率的にデータ化することができる。

もし未来の科学者がゲノムのデータを元に生きたDNAを作り出し、そのDNAから生命体を復元できるようになれば、地球生物のバックアップはゲノムデータだけで十分かもしれない。

では、そのバックアップ・データはどこに保存すべきか? 先日、パリ協定を死守すると演説したエマニュエル・マクロン仏大統領は、「(温暖化対策に)プランBはない。地球Bはないからだ」と言った。人類再生のチャンスも一度きりだろう。

その点、人類滅亡に備えたバックアップを地球に置くのははいかにもリスクが高く、宇宙に置くしかないのは誰の目にも明らかだろう。

植物の種子は、宇宙空間で短期的に(半年間)保管されたことがある。宇宙で保管後に地球へ戻しても発芽能力があるかどうかを試すためだ。そうした実験の目的は、最終的に宇宙ステーションや火星などの宇宙空間で植物を育てることだ。

人類1.0から人類2.0へ

宇宙の環境は生物にとって苛酷だ。細胞は、DNAを傷つける強い放射線にさらされる。従って、種子の保存場所は地球の低い軌道上が望ましい。地球に近ければ、地球の磁場が宇宙から降り注ぐ放射線をある程度遮ってくれる。それより外側の軌道上や宇宙空間に保存する場合は別途、放射線から生物素材を保護する手段が必要になる。

最後の問題は、軌道を周っているであろうバックアップがいざ地球で必要になったとき、正しい場所に正しい方法で戻すことだ。恐らく人類に必要なのは、2012年公開のSF映画『プロメテウス』に登場するデービッドのようなアンドロイド型の宇宙飛行士だ。そうすれば必要になった時点で、バックアップを保存している宇宙船を地球に帰還させられるだろう。

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