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太陽エネルギーが石炭産業を殺す日

ニューズウィーク日本版 / 2017年7月15日 17時10分

<パリ協定を離脱して石炭重視を貫くトランプだが、技術革新と低価格化でどのみち自然エネルギーが主流になる>

今の時代に石炭産業を保護する――それは、パソコンが急速に普及しだした80年代にタイピスト職を保護するくらい無意味なことだ。

なぜか。ドナルド・トランプ米大統領がどんなにじだんだを踏んでも、太陽光技術の発展によって石炭・石油産業はいずれ破壊されるからだ。

米半導体メーカー・インテルの創業者の1人であるゴードン・ムーアは65年、「半導体の集積度は18カ月ごとに倍増していく」と予測した。半導体の高集積化と低価格化を進めたこの「ムーアの法則」は、太陽光にも当てはまる。

半導体ほど急速ではないものの、太陽光技術もより安く、より高度に、予想を裏切らず持続可能な方法で発展している。2030年頃までに、太陽光は石炭を含むあらゆる炭素資源の半分以下のコストでの発電を可能にするだろう。

その意味では、地球温暖化対策の枠組みであるパリ協定もほとんど無意味だ。技術が発展し、経済の法則に従えば、おのずと問題は解決されるのだから。

となると、大きな疑問が湧いてくる。世界のどの地域が再生可能エネルギーのシリコンバレーとなり、どの企業がこの業界のインテルやマイクロソフトになるのか? パリ協定を離脱したトランプの決定に何か意味があるとすれば、こうした地域や企業がアメリカではないことを確実にした、ということだ。アメリカは、誰も望まない石炭を掘ることにかけては超一流の国になり果てるだろう。

太陽光パネルの開発過程は、マイクロプロセッサのそれと共通の特徴を持つ。ムーアの法則は本質的に、メーカーが小さな面積により多くの機能を詰め込もうとすることを意味する。おかげで、NASAが月面旅行に結集したコンピューターの力の全てが、今では小さなアップルウオッチに組み込まれている。

同様の力学が太陽光パネルをより高度かつ安価に進化させつつある。技術者は太陽電池の薄型化を追求し、1ワット当たりのシリコンを削減し、効率化を上げて製造コストを押し下げる。

専門家は太陽光発電の可能性を80年代から唱えていたし、技術革新の速度も落ちてはいない。米エネルギー省は(少なくとも気候変動を認めない現政権が登場するまでは)、太陽電池モジュールの1ワット当たりの価格が1980年の22ドルから3ドル未満にまで下がったと発表していた。

【参考記事】インド、2030年までにガソリン車の販売を禁止し、電気自動車を推進

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