日本の「料理人帯同制度」は世界でも少数派 おもてなしの是非
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月14日 20時0分
4年前のこのブログで、河野氏は日本食、日本の食材を高く評価し、「強力な日本のコンテンツ」とさえ言っている。ここからは持論の「公邸料理人帯同制度」不要論は結び付かない。
これは想像だが、河野氏はある時点から持論を見直したのではないか。21世紀に入って日本料理は世界的なブームとなるが、日本人自身が世界における日本料理ブームを広く認識するのはそんなに前ではない。ちなみに、和食が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されたのは、河野氏が駐日EU大使の晩さん会に出席したその年の12月である。
無駄遣いの削減、公金のきちんとした管理、情報開示など、外務省への厳しい姿勢を堅持してきた河野氏からすると、もてなすならレストランでいいではないか、と一時は思っていた。そうすれば公邸料理人を、大使夫妻の日常の食事にも担当させる不透明さも無くなり、公私混同も避けられる。
しかし、日本料理や日本の食材が世界的に認知され、「強力なコンテンツ」となっていく中で、公邸料理人が貴重な外交ツールとなると思うようになったのではないか。河野氏が駐日EU大使の公邸料理人の手になる晩さん会をブログで取り上げたこと自体、持論にこだわらない証左と見ることもできる。これからの河野外相の言動に注目しよう。
【参考記事】洋食は「和食」なのか? NYに洋食屋をオープンした日本人の挑戦
【参考記事】NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!
[執筆者]
西川 恵(にしかわ・めぐみ)
毎日新聞社客員編集委員
1971年毎日新聞社入社。外信部長、専門編集委員などを経て14年から現職。
著書に『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、『饗宴外交』(世界文化社)など。近著に『知られざる皇室外交』(角川新書)。フランス国家功労章。
※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。
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