北朝鮮問題、アメリカに勝ち目はない
ニューズウィーク日本版 / 2017年9月6日 17時0分
<北朝鮮は核兵器保有国の一歩手前まで来ており、トランプ米政権は何をやっても勝ち目はない。北東アジアの盟主はアメリカから中国へ、われわれは覇権の移行期を目の当たりにしている>
北朝鮮が9月3日に実施した6回目の核実験は、米本土に届くICBM(大陸間弾道ミサイル)に搭載可能な核弾頭が完成間近だということを証明した。核実験にともなう地震の規模を示すマグニチュード(M)は6.3で、前回2016年9月の核実験と比べて約10倍以上のエネルギーがあった。
今回の核実験で、アメリカの力は相対的に弱まりこそすれ強まることはないだろう。だからこそ、ドナルド・トランプ米政権の対応がますます重要になる。
考えられる今後のシナリオを見てみよう。
■戦争
もしアメリカが北朝鮮との戦争に踏み切れば、周辺地域で数百万人の死者が出る恐れがある。
ジェームズ・マティス米国防長官は3日、アメリカは「大規模な軍事行動で対処する」と語り、北朝鮮を牽制した。このようなトランプ政権の勇まし過ぎる発言は、北東アジア地域でのアメリカの地位を逆に低下させている。
【参考記事】マティスの「大規模軍事攻撃」発言で信憑性増した対北軍事作戦
ソウルで1000万人が犠牲に
当然ながら、北朝鮮に対するあらゆる軍事行動は高いリスクを伴う。北朝鮮を軍事力で抑え込むための良い選択肢など1つもない。8月にホワイトハウスを去る前に、スティーブ・バノン元大統領首席戦略官は北朝鮮問題についてこう言っていた。
「(北朝鮮の核開発による威嚇について)軍事的な解決はない、忘れるべきだ。(軍事作戦開始後)最初の30分間で韓国の首都ソウルの市民1000万人が通常兵器による攻撃で犠牲にならない方法がない限り、軍事的解決策はない。してやられたのだ」
米軍と韓国軍の兵力を合わせれば戦争では北朝鮮に勝つだろうが、いかなるシナリオでも失うものが大きいのはアメリカだ。
■目算違い
トランプ政権が北朝鮮に対して軍事行動を取るぞと威嚇を繰り返すだけで、それらを実行する気がなければ、アメリカの同盟国を危険にさらし、中国に北東アジアの秩序を作る中心的な役割を渡すことになる。
【参考記事】中国が切った「中朝軍事同盟カード」を読み切れなかった日米の失敗
北東アジアにおけるアメリカの同盟諸国、とくに韓国との関係は、トランプが次にどんな手を打とうとも、緊張を強いられることになるだろう。
北朝鮮が核弾頭搭載可能なICBMを完成させれば、万一戦争が起きた時に、韓国や日本を防衛するアメリカのリスクが増える。アメリカの安全保障に依存してきた日韓両政府からアメリカに対する信頼も揺らぐ。
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