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北朝鮮問題、アメリカに勝ち目はない

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月6日 17時0分

アメリカの軍事行動が戦争にエスカレートすれば、ソウルは北朝鮮の迫撃砲による集中攻撃を受け、韓国の他の場所や日本、さらに遠く離れた地域もミサイル攻撃の標的になりうる。

【参考記事】日本、北朝鮮に打つ手なし?

もし北朝鮮が窮地に追い込まれ、金正恩体制の存続が直接的な脅威にさらされれば、北朝鮮は核兵器を使用する可能性が高い。もし日本や韓国が核攻撃を受ければ、アメリカとの同盟は本来の役割が果たせなかったことになり、日韓とアメリカの関係はさらに大きな圧力にさらされる。

■制裁

もし今後も制裁の効果が上がらなければ、北朝鮮は核兵器保有という目標を遂に達成するだろう。

そうなれば、NTP(核拡散防止条約)体制は崩壊の危機に瀕する。北朝鮮が核兵器の開発に成功すれば、核開発を目指す他の国々にとって、効果のない経済制裁を科せられる以外に何ら罰を受けることなく核開発が行えるという悪しき前例になり、結果的にNPT体制は形骸化する。

またアメリカの核抑止力も著しく衰える。北朝鮮のように核兵器保有に執念を燃やす国を止められないことがはっきりするからだ。

「核独占」の終わり

核兵器を保有できる国を米ロ英仏中の5カ国に限定するNPTの「核独占」という考え方は、アメリカの覇権を支える柱の1つだ。だがNPTに加盟していない核兵器保有国は、「核の影」をちらつかせることで、アメリカと取引でき、力の行使の選択肢も狭めることができる。

■米中貿易戦争

もしアメリカが、北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を断つために中国に圧力をかければ、アメリカには勝ち目のない米中貿易戦争に発展する恐れがある。

トランプは3日にツイッターで、アメリカは「北朝鮮とビジネスをするすべての国と貿易を停止することも検討中だ」と述べた。これが北朝鮮の最大の貿易相手国である中国に対する圧力であることは明らかだ。

トランプの主張よりもさらに踏み込んだのは、スティーブン・ムニューシン米財務長官だ。彼は、財務省は北朝鮮との「すべての貿易やビジネス」を停止させる新たな経済制裁を策定中だと明らかにした。

北朝鮮が中国に頼っている石油の禁輸を求める声も上がっている。

だが、2016年にアメリカの中国からの輸入は4630億ドル。バラク・オバマ前米政権下で国務長官を務めていたときのヒラリー・クリントンが指摘したように、アメリカ最大の輸入相手国である中国は、アメリカに多大な影響力を持っている。

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