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強気の北朝鮮 メディアが報じなかった金正恩の秘密演説

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月14日 19時24分


ちなみにこの「苦難の行軍」の頃、金正恩はスイスに留学していたとみられる。自身がこうした悲惨な祖国の状況をどこまでじかに見たのか疑わしいが、そうした犠牲を払った時代を乗り越え、ついに核・ミサイルを手にしたというのである。無論、どこまで人民がこのストーリーに涙し、共感するかは分からないが、金正恩の求心力をある程度は高める効果はあるだろう。そして金正恩は戦争へ備えよ、とハッパを掛けるのだ。

<帝国主義者どもは核強国の戦列に堂々と入ったわれわれにむやみにはかかってこられないが、そうだとしても心のタガを緩めてはなりません。オオカミは百回変身しても羊にはなりません。われわれは敵どもが挑発してきたら、無慈悲に消滅させ、民族の世紀的宿望である祖国統一を成し遂げるよう戦争準備を徹底して進めなければなりません>

核・ミサイルの偉大な完成者 それにしても、世界一の軍事力の米国を恐れないのはなぜか? 核・ミサイルがあるからという理由だけでは無さそうなのだ。



<敵どもは武器万能論に寄り掛かっていますが、われわれは思想論を主張します。戦争勝利の決定的要因は党の周りに一心団結した千万軍民の政治思想的威力です。私は米帝侵略者どもがあえて襲い掛かってくれば、全民抗戦で向き合わなければならないと強調していますが、それは千万軍民の政治思想的威力によって祖国統一を達成せよということです。わが人民は党を絶対的に信じ、勝利を確信しているので、あしたすぐに戦争が起こったとしても恐れません。敵どもは厭戦(えんせん)思想に染まっていますが、わが人民と青年学生は情勢が先鋭になるたび、『首領よ命令のみ下されよ』という歌を高らかに歌い、敵を滅ぼす闘志をみなぎらせ、人民軍隊への入隊、復隊を熱烈に嘆願しています>

演説の締めくくりに金正恩は「祖国の未来には希望がある」として、こう言うのだ 。

<われわれは主体的国防工業を強化し、強い威力のある国防力、戦争抑止力で敵どもが膝を屈するようにさせ、祖国の平和と安全を守護し、経済建設と人民生活の向上のための闘争に資金と労力を集中できる有利な条件をつくらなければなりません。そして、わが人民たちが軍事強国、核強国の徳を受け、子々孫々、幸福を享有しなければなりません。その日は遠くありません。その日はわれわれの目の前にあります>

恐らく北朝鮮では今、あらゆる職場や組織でこの「自強力第一主義を具現し、主体的国防工業の威力を固めていかなければならない」という長々としたタイトルの金正恩秘密演説をテキストに学習が進められていると思われる。金正恩が金日成→金正日と続く核・ミサイルの「偉大な完成者」として教え込まれているはずである。

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