日本が急接近するインドが「対中国」で頼りにならない理由
ニューズウィーク日本版 / 2017年9月20日 6時40分
とりわけASEAN(東南アジア諸国連合)との関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げした12年以降、モディ政権は安全保障上の問題で東南アジア諸国と歩調を合わせてきた。南シナ海における領有権争いでも、ベトナムを一貫して支持している。そしてアメリカでも、インド洋における米軍とインド軍の協力関係を正式な同盟関係に格上げすべきだとの議論がある。何しろ世界の石油輸送の6割以上がインド洋を通過しているからだ。
【参考記事】インドの性犯罪者が野放しになる訳
中国にまだまだ追い付けない
「インドの貿易の50%は南シナ海を通過しているのだから、そこに関心を持つ正当な理由がある」と言うのは、中国研究所(デリー)のジャビン・ジェイコブだ。南シナ海における航行の自由や領有権など、あらゆる問題でインドは「国際法に従うという立場を明確にしている」とも語る。
しかし、今のインドがいくら強気の姿勢を見せても、インドと日本の同盟で中国に対抗できるようになるのは遠い先の話だろう。
もちろん、62年当時と今では状況が異なる。あの頃インド軍の兵士にはヒマラヤ山脈の高地で戦うのに必要な防寒具さえなかった。今は違う。しかし今でも中国より、経済的にも軍事的にもずっと遅れているのは事実だ。
200万人超の現役兵士を抱える中国人民解放軍は、インドの常設軍(予備役は含まず)の約2倍の規模だ。保有する戦車の数は、インドが約4400台なのに対し、中国は6500台。戦闘機はインドが約1500機で、中国が2500機だ。
フリゲート艦と駆逐艦はインドの保有数がそれぞれわずか14隻と11隻。対する中国は51隻と35隻を誇る。そして7月にインド議会に提出された報告書によれば、全面戦争が始まった場合、インド軍の保有する弾薬はわずか10日で尽きてしまう。
しかし、とコンダパリは言う。インドには中国を軍事力で制しようなどという気はない、ただ抑止力になる程度の軍備を備えたいだけだ。「中国が圧倒的な軍事力を持っているとはいえ、戦闘になれば(中国側にも)多大な犠牲が出ることになるだろう」
これを踏まえて、インドと中国とブータンが国境を接するドクラム高地で中印部隊がにらみ合いを続けた一件(8月に相互撤退で合意)を考えると、インドは少なくとも国益に関わる限り「やれるものならやってみろ」という態度で臨むことにしたようにみえる。
過去10年ほど中国は「国境侵犯」などでたびたびインドに不意打ちを食らわしてきた。またパキスタン支援を通じて間接的に、イスラム系武装勢力のカシミール地方への侵入を後押しした。
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